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聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのmoimoiのレビュー・感想・評価

4.4
私は何を見せられたのだ…?と途方にくれる。
支配するものが支配されるものになり、「平等」のもとに裁かれたものが命の優先順位をつける。
マーティンはいったい何者だったのか。
夫婦の視点から傍観者の視点に切り替わるラストの壮絶さ。
音楽と効果音が心を削っていく。
これは映画館で観たかった!(地方にはまわってこなかった)

「ダンケルク」で私が誰よりも心惹かれたのはバリー・コーガンだった。
どこにでもいる普通の純朴な男の子の佇まい、それが物語における贄として屠られていく凄まじい哀しみを、全身で発していた。
「聖なる鹿殺し」で演じたのは屠る側に転じた悪魔的な少年。
ほとんどのシーンが無表情で、瞳は感情がなく、物言いは抑揚がなく静かだ。
そこには底知れぬ〝無〟があり、主人公も観客もその淵を覗かされる。
得体の知れぬそれに蝕まれる。
特にスパゲッティを食べるシーンは圧巻だ。神経に直に触れ、逆撫でるようなおぞましさ。
なんという演技力!
これからも活躍を見ていきたい俳優の一人になった。
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