mrかっちゃん

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのmrかっちゃんのレビュー・感想・評価

5.0
本当に恐ろしく引き込まれる映画体験でした。
こんな映画見たことない。
「マジカルガール」を初めて観た時と同じ感覚になった。
脚本のおもしろさで言えば今年公開された作品の中ではダントツのトップかもしれない。

傲慢な心臓外科医スティーブンは家族たちと幸せに暮らしていたが、過去の医療ミスで死なせてしまった元患者の息子マーティンと自責と後悔の念から交流を深めていた。
そんな彼を家に招いたことから始まる、
日常が非日常へと徐々に犯されていく生理的に嫌な感覚と、全編から漂う不気味で邪悪な雰囲気のサイコスリラー。

この作品自体かなり難解な内容で、何故不可思議な現象が主人公家族を襲うのか。
マーティンとは一体何者か。
タイトルの「聖なる鹿殺し」とは一体何を意味しているのか。
明確な解答は提示されないままエンディングを迎えます。

だが、謎を紐解くヒントは作品の中に散りばめられており、1つは終盤マーティンの
常軌を逸した行動を取った後の「これは罪のメタファーなんだよ」という台詞。
2つ目は娘キムが書いた「アウリスのイピゲネイア」というギリシャ神話のレポート
3つ目は劇中でマーティンが亡くなった父との思い出の映画と語る「恋はデジャヴ」
これらのことは映画の解説を調べて知った事なので、自分の知識のように語るのはやめます。

ここからは自分が感じたことを書きます。
劇中の地獄めぐりのともとれる試練はあまりにも酷すぎる因果応報のようで、
「目には目を、歯には歯を」ハンムラビ法典に則った話のように思えます。

「LOVELESS」という映画を今年観ましたが、今作も同じく誰かを愛するという事を劇中から意図的に消しているからこその救いの無さがあるのだと思います。