「映画は娘が父との記憶をたどる物語だった。彼はその映画の静けさが好きだと言っていた」
エルスールの映画を見終わった二人が名画座を出ていくシーンのセリフ。
このセリフのようにナラタージュも全編を通して静かに進行していく。
すがり愛なのかな。
都合のいい関係と言ってしまえばそうなんだけど、互いにいなきなきゃいけない存在だった。
泉の気持ちを知ってて優しく接していたのだから、葉山先生はとてもずるく感じる。でもそこに悪意はなくて、泉に優しくすることで自分を保ってたんだとわかると、すがってしまったのは仕方ないことなのかもしれない。
泉も、「最初は一緒にいれるだけで幸せだったのに、次第に自分の欲望が越えてしまった」と話していた通り、求めてしまったからこそ葉山先生の態度に疑問を持ちながら愛したのだと思う。
この関係性に先の幸せはなくても、今は必要というのはありふれてるんじゃないかな。それは恋愛じゃないけど、愛ではあると思った。
2021.1.23 - 2回目の観賞
最初観たときは嫌いで仕方なかった小野くんの愛し方に少し共感する部分を見いだせた。
小野くんは対等に恋愛したかっただけなんだろうなーって思う。そして、泉が葉山先生を好きだってことを知ってたからそれ以上の存在になりたかったんだと感じた。自分の愛し方が悪いのか、どうしたら自分だけを想ってくれるんだろうと思うのは自然なことだし、大学2年生だもん…ストレートに表しちゃうよね。
泉が病院に戻ろうとするシーンで「申し訳ないと思うなら手をついて謝れ」や「靴を脱いでいけよ」って言ってたけど絶対本心じゃなかった。
普通ならそんなこと言われて反抗したりするもんだ。でも泉は、小野くんがの言ったことをすんなり受け入れてしまって、小野くんは本当は悲しかったと思う。
誰かを救うことで自分が救われてるなと思ったり、救われた分返したいと思ったり、対等な関係で愛し合いたいと思ったり、そういう感情で居場所をみつけられるのならいいんじゃないかな。
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有村架純さんの演技が素晴らしかったな…本当に。(ここ最近好き度が増してる。)
そしてカメラワークが好みだった。
・泉が靴を履いて小野が抱きしめるシーンを足元の画だけでまず見せたこと。
・肩越しから表情を捉えているところ。
・ライティングの色鮮やかさ。
・シャワーシーン
(水が勿体ないって思ってしまったけど。笑)