亘

あなたのママになるためにの亘のレビュー・感想・評価

あなたのママになるために(2015年製作の映画)
3.6
2012年マドリード。失業中の教師マグダに乳がんが発覚する。シングルマザー状態でダニエルを育てる彼女は将来を見失いそうになる。そんな折サッカーのスカウトマン、アルトゥーロと出会う。彼との出会いからマグダは再び生きる希望を見出し始める。

ペネロペ・クルスが体当たりでガン患者と妊婦を演じている。ガン患者の方でいえば抗がん剤で痩せ細った姿とか坊主頭、それに特殊メイクとはいえ乳がんで右胸を亡くした姿を見せる。この体当たりの演技は今作のポイントだと思う。確かに脚本がどこか作られた感じは多少あるかもしれないけどペネロペ・クルスの演技がリアルで、この作品のテーマでもある力強さを表現していると思う。

この作品のテーマは"生きる喜び・力強さ"だと思う。マグダは乳がんになって不安に苛まれたりするけどダニエルやアルトゥーロの支えがあって手術・治療を乗り切る。そして余命宣告をされた後からでもアルトゥーロとの間に子を授かる。病気とか死に直面してからでもマグダは生きることから逃げたりしないで生きようとするし、アルトゥーロとダニエルと一緒に人生を楽しもうとする。"話す、考える、夢を見る、泣く、闘う、笑う、感じる、愛する、苦しむ、それが生きること"とマグダの主治医フリアンが歌ったけど、マグダはそれらを体験して、まさに悔いなく生きたはず。

ラストシーンでは皆がナターシャを取り囲んでいる。ダニエルがナターシャの目を見て「ママ、愛している」と話しかけるのはナターシャにマグダの命を見たから。その後フリアンの歌の合唱が起こる様子はまさにマグダとナターシャの命を讃えているようだった。

印象に残ったシーン:マグダが治療でどんどんやせ細っていくシーン;ペネロペ・クルスの体当たりの演技が素晴らしかった。
フリアンが海で歌を歌うシーン;フリアン自身も趣味の歌によって人生を楽しんでいるようだったし、歌詞はまさに今作のテーマ。
ナターシャに向かって合唱するラストシーン。
亘