えんさん

劇場版 暗殺教室 365日の時間のえんさんのレビュー・感想・評価

1.0
月を破壊した超生物の暗殺を依頼された、名門・椚ヶ丘中学校の落ちこぼれクラス3年E組。同時に、その暗殺対象となる超生物は”殺せんせー”と呼ばれ、クラスの担任にもなってしまう。。実写映画化もされた松井優征のコミック『暗殺教室』を原作にしたテレビアニメの総集編。原作やテレビアニメで描かれなかったオリジナルエピソードを交えて、超生物・殺せんせーとその暗殺を託された生徒たちの1年を振り返る。監督は『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』シリーズの岸誠二監督。

テレビアニメの劇場版というのはよくあります。「ドラえもん」や「名探偵コナン」などのようにTVシリーズの番外編として長編で描かれるものや、「鋼の錬金術師」のようにTVシリーズの話の流れで結末やアナザーストーリーとして描くものもあります。今、それ以上に多い形なのが、TVシリーズの内容を再編集して、テレビだと何話分かに細分化されていたのを1本の映画作品としてまとめ、映画館での大迫力で楽しめるようにしたタイプのもの。実はテレビアニメはゴールデンタイムにやっているものはひところよりは少ないものの、地上波深夜枠やケーブルテレビ、衛星放送に、オンラインでの有料チャンネルなど放送していく媒体はどんどん増え、製作されている本数は昔よりむしろ増えているかもしれません。昔は、アニメで地上枠にはまらなければ、DVDなどのOVAに挑むくらいしかなかったのが、これだけ枠が増えたのはアニメ界全体では嬉しいことでしょうが、過当競争も当然激しくなるので、一本の単価は減っているんちゃうかなと心配になったりもします。その中で、例えば、「おそ松さん」のような大ヒットにつなげるものもあるので、一攫千金の世界なのかもしれないですけどね。

で、本作はご存知、今年の春に羽住英一郎監督の手で、実写版の後編も公開になった松井優征原作の人気コミック「暗殺教室」。そのTVアニメ版で、2015年より地上波及びBS等で放送された作品の総集編。総集編といっても、殺せんせーの暗殺後、アニメ版でメインの主人公で登場していた潮田渚と赤間業の2人が、懐かしの校舎に戻ってくるという設定で、彼ら2人の回顧という形で物語が始まっていきます。実は、本作を見るにあたって、TVシリーズ47話をイッキ見したのですが、TVシリーズの最後は本作で登場する2人以外が、校舎に戻ってきて、中学時代を懐かしんでいて、そのときにいなかった2人が映画に登場してくるという、なかなかセンスある設定になっています。しかし、センスがあるのはここまで。回顧という形で総集編がスタートするのですが、ほとんどが殺せんせーの暗殺がメインとなる最後の4話分くらいがそのまま上映されているに過ぎないのです。これはもう総集編ではなくて、ラスト4話分がそのまま放送+渚と業の2人の卒業後がオマケの特典映像としてついているに過ぎない。確かに、このラスト4話はシリーズでも屈指のエピソードで、泣けて感動するのですが、それはあくまでTVシリーズで堪能したものの繰り返し。それを再び映画館で観てもね、、、という気になってくるのです。

とはいえど、僕はTVシリーズを見させていただいて、実写版で感じていた安っぽさが、アニメだと普通に面白くかつ教育アニメとしても一級な作品になっているのに、ますます「暗殺教室」ファンにはなってきました。このアニメ版を見ると、実写版は(頑張っていたけど)ちょっと見れないですね。実写版では影が薄かった業の密かな野望というか、夢みたいのも壮大で、こういうクールな人間になりたいと素直に思います。ただ、総集編なら、もっとシリーズ全体を通した均等な形での総集編にしてほしかった。ラスト数話だけ見たいわけじゃないと、ファンはきっと思うはずです。