kasmi

ギフト 僕がきみに残せるもののkasmiのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

スティーブ、なんて素敵な父親なんだろう。彼の人生とありったけの愛が詰まったビデオレターは、何年先もリバースを守り続けるだろう。

息子リバースが0歳から1歳になるまでの1年間、赤ん坊というのはかなりの速さで成長するものだが、それ以上の速さで衰えていく父の姿が生々しくありのまま記録されている。徐々に声が出なくなり、身体が自由に動かせなくなる。意識が明晰なままに、目に見えて死期が迫ってくる体験は想像を絶する恐怖だろう。ましてやかつてヒーローと呼ばれ人々から尊敬された最強のアメフト選手だ。プライドが傷つかないわけがない。
それでもおそらく見ることのできないであろう先の未来に思いを馳せ、夢を語るスティーブの笑顔は、この世の何よりも優しく温かいものだった。


いちばん心に残ったのは、「きみ(リバース)はいつの日か、僕と違う考えを持つだろう。その日が心から楽しみだ」という言葉。
これはスティーブと父との印象的なシーン、「信仰を押し付けないで、僕の精神は救われている!」という部分と通じるところがある。
スティーブは、異なる考えをもつことにより生まれる食い違いを、愛によって乗り越えようとしている。
誰かと心の底からすべてをわかりあうなんてできないけど、絶望して心を閉ざしたり相手を攻撃したりするのではなく、その違いを許すこと。スティーブが教えてくれた幸せへの道筋だ。

また、スティーブと共に戦った妻ミシェルとヘルパーを始めとする周囲の人々の人間性にも心を打たれた。ミシェルの明るさと強さは「希望」そのもの。

「お金があるから、病気になっても生き方を選べるんだ」と言う人もいるかもしれない。「延命は最善の選択ではなかった」なんて言う人ももしかしたら、もしかしたらいるかもしれない。
だけど、幸せの形について他人がとやかく言う資格はないのだ。

誰がなんと言おうと、これがヒーローの生き様。
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