えんさん

僕のワンダフル・ライフのえんさんのレビュー・感想・評価

僕のワンダフル・ライフ(2017年製作の映画)
4.0
字幕版にて。

少年イーサンに命を救われたゴールデンレトリバーの子犬ベイリー。イーサンの成長に常に付き添い、彼の人生において重要な役割を担っていた。しかし、犬の寿命は短いもの。家を出たイーサンとの別れが訪れた後も彼に会いたい一心で、姿を変えながら何度も生まれ変わる。ゴールデンレトリバーからはじまり、ジャーマンシェパード、コーギー、セントバーナードとオーストラリアンシェパードのミックスの姿に転生していく。その中でも様々な人との出会いを経験しながら、大人になったイーサンと再び出会うことになるのだが。。「HACHI 約束の犬」のラッセ・ハルストレム監督が、全米ベストセラー小説『野良犬トビーの愛すべき転生』を映画化した作品。

世の中には犬好き、猫好きと分かれるようですが、小さな頃から猫アレルギーの自分は、自然と犬派になっていました(笑)。今でもよく覚えているのは、それこそ小学生低学年くらいのときは犬が欲しくて欲しくて、今ではめっきりいなくなった野良犬を家まで連れて行ったり(もちろん、親に追い出されましたけど笑)、保健所とかの犬との出会いイベントとかにも行ってた記憶があります。その中で最初に飼ってもらった犬は、離れて暮らしている祖母の家の近所で子犬が結構な数生まれたから、一匹引き取ってくれないかという、田舎ではよく聞く話。コリー犬の雑種のオス犬でしたが、家の中でよく走るので”ラン”と名付けていました。これもよくある話で、最初は自分が散歩に連れて行くなどの世話は積極的にしていましたが、中学くらいになると世話は親まかせに。。今なら考えられないですけど、当時は放し飼いにしてるときもあって、散歩中に車にはねられ、7、8歳くらいで亡くなってしまいました。

その後もプードルの雑種も飼ってたこともあるのですが、もうその頃は家も出ていたので、やっぱりよく覚えているのは最初の犬ですよね。元気でよく走る割に少食で、餌をやっても、餌が干からびるくらいに少ししか食べなくて大丈夫かと思った犬ですが、よく懐いてくれたので思い出も深いです(まぁ、あんま世話はしなかったけど、、)。もし、犬が口を聞けて、彼が思っていることを知れたら何を言っただろう、、というのが、映画の中で実現したのが本作といえます。「ベイブ」など動物が喋る作品というのも過去にあったりしますが、本作の主役ベイリーの声は、あくまで作品を観ている私たちが聞こえる彼のモノローグにすぎない。素敵なのは、犬の短い犬生において、彼らの魂が次々と転生していくという設定でしょう。仏教的な輪廻転生ではなく、あくまでベイリーが起点であって、犬として必ず生まれ変わるというのがどうかとも思いますが(笑)、そんなの犬好きにとっては些細な傷にすぎない。犬を愛して、飼っている(飼っていた)、全ての人の作品だといってもいいと思います。

ベイリーが中心となる前半部のイーサンを中心としたお話が、中年になったイーサンが再びラストで出てくる後半部とブリッジされているのですが、見逃せないのが転生していく間に挟まる人々と犬とのドラマ。僕が特に好きなのが、犬好きだけど男性の前には内気になってしまう女学生のエピソードですかね。転生中のベイリーによって、気になっていた男性と結ばれ、家族になった後も、彼らの家族の中心になっていくというのは犬としての最高の犬生じゃないでしょうか。無論、愛されずに死んでしまう儚い犬生もあったりしますが、それも含めて全て犬と人との繋がりを映画作品として紡いでくれる。「サイダーハウス・ルール」など、人の生きるナチュラルな世界を映像化するのに長けるハルストレムの演出術が効いています。映像は美しいのですが、若干シーンごとのつなぎがおかしくなっている編集の粗さが見えますが、それも犬好きにとっては些細な傷に過ぎないと思います(笑)。