emily

サバイバルファミリーのemilyのレビュー・感想・評価

サバイバルファミリー(2017年製作の映画)
3.5
 東京のどこにでもある平凡一家の鈴木家。しかしある日電気が使えなくなったら・・交通機関は止まり、ガス、電気、当たり前にあった物がすべて使えなくなり、東京はパニックに陥る。鈴木家は妻の父が暮らす鹿児島目指して、自転車で東京を脱出することに・・

 電気がなくなったら・・・そこから広がるまだ見たことのない世界。しかしそれは日本の現代をしっかり浮き彫りにする。物にあふれて見えなかった不必要な物、それが徐々にそぎ落とされていき、最後には大事な物だけが残る。電気がストップした瞬間から今の日本を切り取るように、コミカルながらもその描写は非常にシリアスに、観客に問う物がある。
 
 一家族を通して、様々な世代が混在する小さな社会で、それぞれの行動を追う事で見えてくる、家族においてのそれぞれの役割。それは無意識ながらも、確実に自分の役割を体が、心が把握し、それにのっとって行動する。一人とて無駄な人はいない。それは小さな家族社会においてだけではなく、社会においても同じ事が言える。

 サバイバルの描写はコミカルの枠組みの中で行われているが、距離を稼いで撮影されただけあり、その些細な描写の一つ一つに、感動や共感を呼ぶ。どんな窮地に立たされても、日本の風景は美しく、そんな時だから、単純な事に幸せを感じられる。

 息をしている、食べる物がある。それだけの事が幸せだと、やはり失ってはじめて気づかされるのだ。決して大げさではない、コメディの中に残すメッセージ性は壮大で、大きな気づきを残してくれる。大事な物は片手の中に収まる。不必要を脱ぎ捨てそれがやっと見えるのだ。
emily

emily