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島々清しゃのKUBOのレビュー・感想・評価

島々清しゃ(2016年製作の映画)
3.2
今日は、あの巨匠新藤兼人を祖父に持つ新藤風監督11年ぶりの新作「島々清しゃ」の初日舞台挨拶を見に行ってきました。

冒頭美しいエメラルドグリーンの海に引き込まれる。舞台は沖縄、慶良間島だ。

島で唄者のおじいとふたりで暮らす少女うみは、特殊な絶対音感を持つせいで少しでも音のズレを感じると頭が痛くなってしまい、普通の生活が送れない。「ちんだみ(調弦)狂ってる!」と叫ぶと、頭を抱えてしゃがみこんでしまう。そこに東京から演奏のためにヴァイオリニストがやってきて、ふたりの出会いがうみの閉ざした心を開いてゆく。

主演の安藤サクラさんは、実は15歳の時、宮古島に来たことがあるのだそうだ。サクラさんは「百円の恋」で日本アカデミー賞主演女優賞を受賞した後、一年間役者の仕事を休んでいたのだが、この作品の話をもらった時、その宮古島での思い出が蘇ってきて不思議な巡り合わせを感じたそうだ。

また少女うみには「湯を沸かすほどの熱い愛」で注目された期待の子役、伊東蒼。録音テープを何度も聞いて覚えたというウチナーグチは大人の俳優も顔負けの巧みさ。テアトル新宿で行われた初日舞台挨拶では感極まって涙ぐんでいた姿が、何とも可愛かった。

また作品全編を通して聴くことのできる、おじい役の沖縄民謡界の重鎮、金城実さんによる歌と三線も見どころ聴きどころのひとつ。

監督の進藤風さんは、あの名作「ナビィの恋」「ホテル・ハイビスカス」の助監督からキャリアをスタートさせた方だけに、沖縄への並々ならぬ愛を感じる。劇中、何気ない家族の団らんの中にヤモリの声が聞こえる(ヤモリって鳴くんですが、知ってますか?)。それだけでそのフィルムの中の団らんがリアルな生活として見る者の心の中に飛び込んでくる。波の音、風の音、虫の声、音がテーマな作品だけに、録音にも心憎い気配りがある。

慶良間の海と自然の中で、おじいの唄う「島々清しゃ」が、少女うみとヤマトンチュのネーネーと島の人々をひとつにしていく。見終わった後には深呼吸をしたような清々しさを感じられる温かい作品だ。
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