えくそしす島

サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~のえくそしす島のレビュー・感想・評価

3.5
【振動】

当たり前だと思っていた音が、突然聞こえなくなったら、人は一体どのような心理状態を経て、やがてどういった境地に陥るのだろうか。ましてやそれが、自身のアイデンティティに直結するものだとしたら。

この作品はサブタイトルにある「聞こえるということ」を真正面から捉えた作品だ。

あらすじ
バンドのドラマーであるルーベンは恋人でもありボーカルのルーと一緒に、車を住まいにしながらツアーの真っ最中であった。だがある日それは起きた…

特筆すべき事は何と言っても「音」だ。
この音響の表現には衝撃を受けた。
アカデミー賞で音響賞をとったのも当然だ。

健聴者が擬似体験出来る作りになっている。難聴者にはどのように聞こえるのかを。

何が聞こえ
何が聞こえず

何が消え
何が残るか

聞こえないことを通して聞こえると言う事をまざまざと考えさせられる。

主演のリズ・アーメッドは途中からサウンドブロッカーをつけて実際に耳が聞こえない状態で演技をしている。自分の声すら聞こえていない。

この手の作品は自分と重ねて観てしまう。考えてしまう。年齢的なもの、性格的なもの、生き方的なもの。
どうしても感情移入出来ない場面もあり自分の点数は低めだが人によっては満点になり得る作品だ。

そして、この映画の終盤からエンディングまでの素晴らしさよ。美しいとすら思ってしまった。

劇場かイヤホンやヘッドホンで音に集中して観て欲しい。

静寂と無音は違う