翔海

サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~の翔海のレビュー・感想・評価

3.9
音を失ってゆく世界を愛せるか。

突如として難聴になったメタルバンドのドラマーのルーベンは、ツアーの真っ最中であった。バンドメンバーで恋人のルーはルーベンに治療に専念してもらいたいと願い、難聴者のコミュニティに彼を連れてゆく。失われてゆく聴力に焦るルーベンだったが、恋人ルーと話し合い、コミュニティでの生活を始める。聴力を失って間もないルーベンは手話で会話するコミュニティに孤独になるが、ルーベンにも役割をくれるコミュニティに居場所を見出し始める。都会から離れコミュニティに生活を送るなかで自分の抱える難聴のことを受け入れられるようになってくる。順調に生活をしていたルーベンだったが、これからの人生のためにある決断をする。

掴みかけてた夢半ばに光が閉ざされる。
ツアーの真っ最中に突如耳が聞こえにくくなったルーベン。やっとの思いでここまで辿り着いたのに絶望が待っていた。悪夢のような現実を受け入れるためには時間が必要である。自分と向き合う時間だったり、治療を要するのにも時間が必要であった。コミュニティに入る時にルーベンは難聴の治療ではなく、心の治療をここでするんだと言われていたが、最後まで見るとこの意味が分かる。この時まではルーベンも映画を見てる側の人も難聴の治療だろうと思っていただろう。絶望的な現実を受け入れて生活することが如何に難しいかをこの作品はルーベンの抱える難聴をサウンドにのせて観る者に伝える。

昨今では動画配信サービスのオリジナル作品も増えている。AmazonやNetflixが制作する作品たちはコロナ禍の世界に合わせるかのように劇場に行かなくても見れるように変化しているよう。昨年と今年もコロナよって劇場に足を運ぶのが減った人も少なからず居るはず。そんな時代にも映画は、変わらず私たちのそばに居てくれた。時代に変化しても映画は変わらない。劇場で見る映画も家庭で見れるようになっても私たちに感動を届けてくれるだろう。コロナの時代に支えてくれた映画たちに感謝をして400markを締めさせてもらいます。
翔海

翔海