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荒野にてのyuienのネタバレレビュー・内容・結末

荒野にて(2017年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

控えめな表面の内側に、確かな熱を孕んでいる。濃密な寂寥感が横溢しながらも、どこか清涼感があり、澄徹としていた。
淡々としたセンチメントが、殺風景な荒野とミルフィーユな空が織りなす壮観に融けこむ。繊細な寡黙さ。

*****

暇を持て余した夏休み。偶然見つけた厩での仕事。馬との交流。それは、少年にとってかけがえのない記憶として心に刻まれた

馬を介して、少年のいたいけなほどにピュアな性質を浮き彫りにし、そのあまりにもいじらしい姿を見て 思わず抱きしめたくなる。

リーンオンピートという名の競走馬は少年・チャーリーの内面部分を象徴していて、馬と少年は切り離された個体ではなく、一つの存在なんだと思う。
母親に捨てられたチャーリーと飼い主に見限られたピート。少年が馬に惹かれるのは必然的であり、そこに自分の影を見出したのではないんだろうか。だからこそ、執着をする。それは同時に過去に執着することをも意味するかも知れない。

父親と愛馬を喪い、チャーリーは、これまで大切に守っていたすべてから 強引に引き剥がされたけれど、過去のこだまはそんなにばっさりと断ち切れるものではない。
深い傷は時間をかけて癒着してゆくもの。心の奥底を蝕む悪夢は完全に消し去ることはできないが、不安を抱えながらも、わたしたちは少しずつ前に進んでいくことはできる。
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