CHEBUNBUN

荒野にてのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

荒野にて(2017年製作の映画)
3.5
【A24が放つ傑作ロードムービー】
日本公開は11月だが、AIR CANADAの機内エンターテイメントで一足早く鑑賞した。

『さざなみ』のアンドリュー・ヘイ監督が最強のインディーズ映画会社A24と組み、ヴェネチア国際映画祭で主演のチャーリー・プラマーがマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞した作品。

父が暴行により、怪我をしてしまい息子が引退した競走馬リーン・オン・ピートの世話をする。しかし、ピートは屠殺される運命にあった。そこで、息子はピートを連れ出し荒野を逃走するという内容。

アンドリュー・ヘイ監督はチャーリー・プラマーの秘めた演技力を120%引き出した!母の愛情を知らぬ少年、父までも怪我で倒れてしまう。学校には通っておらず、居場所はない。心に抱える傷を癒してくれるものはない。それを癒してくれたのは老いた競走馬だった。心に溜まった膿を絞り出すように、馬に話しかける。孤独な少年の繊細な感情をチャーリー・プラマーは仕草と囁きだけで表現する。そして、我々の住む世界からかけ離れた作品にも関わらず心の琴線が揺れ動かされる。

アンドリュー・ヘイ監督は地味で静かな本作にメリハリを与えるべく3回ショッキングなスパイスを加えた。思わずのけぞってしまうようなシーンがこれまた粋。少年の宿命、広大だが閉鎖的空間で血が疼く者の隠し刃をチラリと魅せることで、凡庸な自分探し系ロードムービーから一歩先に進むことができた。
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