にゃんこむ

荒野にてのにゃんこむのレビュー・感想・評価

荒野にて(2017年製作の映画)
3.9
多感な頃を母親不在で過ごし、唯一心を開けるのが一匹の老馬という少年が、安らげる場所を求めて旅するお話。
孤独な少年と老馬の旅を描くドラマ。という紹介のされ方をしている事が多いですが、少年と老馬の荒野の旅シーンはそこまで多ないのでそれを期待して見ると肩透かしを食らいます。

○チャーリーは幼い頃に母親が家を出て行ってしまってから、父親と貧しいながらそれなりに暮らしていた。父親の仕事の都合でポートランドに引っ越してきたチャーリーは、近くにある近所の厩舎のオーナーと知り合い、小遣い稼ぎに馬の世話を手伝うようになる。チャーリーは競走馬としてはやや年老いた馬のピートを特別可愛がっていた。オーナーからは競走馬はペットとは違うので、特別な感情を抱かないようにと注意されていたが……。

チャーリーは小遣い稼ぎに馬の世話をすることを率先して申し出たり、その真面目な仕事ぶりからは要領の良いように思えるのですが、ストーリーを通しての全体的な行動は実年齢より非常に幼く感じました。
作中では彼に手を差し伸べてくれるきちんとした大人が何度か現れますが、その度に彼はその手を振り払って逃げてしまいます。そして彼が引き寄せられてしまうのはどこか父親に似て、だらしない大人。そんな大人だからこそ、チャーリーは安らげるわけもなく、そこからもまた逃げて逃げて、目指すところにたどり着くまでに、物凄く遠回りをしているように思えました。
そう行動せざるを得なかった彼の心の傷や寂しさ、不安といった感情を特に感じ、心を許せる相手が老競走馬のピートというところがまた悲壮感に拍車をかけていました。

チャーリーはピートにはかろうじて話しかけますが、伯母さんに会いたいというその一心以外には何を思って行動してるのかが掴めません。道中はずっとハラハラモヤモヤしていたので、ラストシーン本音を溢すチャーリーには心を動かされました。正直冗長だと感じることが多かったのですが、最後の最後にカタルシスを感じる作品です。
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