木葉

荒野にての木葉のレビュー・感想・評価

荒野にて(2017年製作の映画)
4.6
容赦ない過酷な運命を生き抜く少年が荒野の果てに見たものとは。
さざなみで頭角を現したアンドリューヘイ監督が心から離れられない名作を作ってくれた。
教養もなくその日暮らしだが愛情だけは深い父親が、ある日愛人の夫に重傷を負わせられる。
父を助けるためにチャーリーは競馬場で馬の世話をし、安い賃金を受け取っている。
厩舎で暮らし、友達のいないチャーリーは馬に心を寄せる。
しかし父も命を落とし、唯一心開いた馬も競走馬として使えなくなり殺処分が決まる。
天涯孤独となったチャーリーは馬と共に唯一の親戚マージー叔母さんのワイオミングを目指して、逃げ出すのだった。
次々と降りかかる試練は、過酷過ぎて、
手を差し伸べる人も誰もいなくて、
心にズキズキと刺さって目も当てられない。
愛も希望もお金もなく、
絶望の淵にいるはずなのに、
チャーリーは決して諦めない。
荒野に放り出されて、酷い目に遭い、辛過ぎる仕打ちにあったとしても、
馬と共に1000マイルを飲まず食わずでも進もうとする。
たとえ瀕死の状態でも、生き延びれば
何とかなるはずだと目が語っているようなのだ。
この映画の素晴らしいところは、決して逃げない所だ。
直視出来ない、痛覚を刺激され過ぎたとしても、映画自体も主人公チャーリーも、
感傷に流されない。
寄る辺なさのギリギリまでいっても、
遣る瀬無さを通り越しても、
圧倒的な広大なアメリカ大陸のワイルドさが、少年や馬と共生し、
馬に寄り添う青年を美しく演出しているのだ。
たった一人荒野に解き放たれたチャーリーに、光が射すラストは秀逸過ぎて、涙が止まらなかった。
ただ繊細ながらも懸命に力強く生きる少年の姿に、苛烈で圧倒的孤独と絶望を俯瞰で感じられる素晴らしい映画だ。
木葉

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