蛇らい

荒野にての蛇らいのレビュー・感想・評価

荒野にて(2017年製作の映画)
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これまた今年の重要な作品を見落としていた。最高。大好き。

強くなければ生きていけない状況で生きているのだから、主人公の少年は強い。それでも自分の弱さを恨む彼を見て抱きしめたくなった。愛する父親、生きがいであり友達の競走馬、数少ない心の寄りどころであるそれらすら守れなかったことを無力だったとそれ以上責め続けたら壊れてしまう。そんな中で抱擁してくれる人に出会えたことが本当に救いだった。

うまく言葉にできない10代の未熟さがもたらす感情表現が、人間の本能的な愛情表現にも感じられた。理屈じゃない、ペットじゃない、馬は馬、そんなこと解ってる。でも助けなければいけないという使命感にも似た気持ちは、最終的に全部自分に向いているんだよね。

これからも薄暗い影を落としたような人生になるかもしれないけれど、どこからでも見える位置に穏やかな灯りが道標になり彼を照らしてくれると思う。誰かにとっては頼りない光かもしれないけれど、誰かにとっては全てを包み込むほどの光になり得る。

存在を肯定してくれる作品。それは決して簡単なことではなく、自らを追い込まずしては表現できるようなものではない。劇中で少年に起こる出来事がそれを物語っているように、それを世に放つときに無責任な感覚では届くこと絶対にない。
蛇らい

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