青いむーみん

あゝ、荒野 前篇の青いむーみんのレビュー・感想・評価

あゝ、荒野 前篇(2017年製作の映画)
4.1
 いや、カッコよすぎるだろ新宿新次というか菅田将暉。自分は完全にバリカン目線で観てしまったからバリカンから見る新次への憧れが伝染してしまって、菅田将暉に抱かれたい列があったら並んでしまいそうなことになっている。でも俺もバリカンだ。離れて戦わないといけないんだ。負けると分かっていても…

 大筋は原作と同じ。設定は結構変わっているが変わりすぎているとは思わない。新次の奔放なところは同じだし、ボクシングを始める理由付けが明確になっていてその点深みはなくなっているけど、新次の過去から人となりがくっきり出てわかりやすくなっている。隣席の奴らの話に真っ直ぐな新次が食って掛かるシーンが前篇ではなかったので後篇で期待したい。
 バリカン健二は新次よりも若く、図体だけはデカイイメージだったのでずんぐりむっくりでちょっとオッサンなヤン・イクチュンを見ると心配ではあった。しかしこれは役が彼に寄っていったのか彼はバリカン健二だった。ビクビクしてその分頭でっかちになっちゃって突拍子もないことをやらかす健二だった。この二人の関係は原作よりも濃く描かれている。バリカンの手記は新次からバリカンへの気持ちの強度が上がるいい効果を生んでいた。
 芳子のルックスのイメージはそもそもなかったんだけど、「この人が芳子か」「ああ芳子はこんな感じだったな」「あ、この人芳子だ」の三段階活用で合致していった。身体売って他人を騙しながら飲食店で働く女性って結構限定されそうなルックスだから意外と合う人いないんじゃないかな。しかしあれくらい身体はれる若い女優さんどれくらいいるんですかね?
 自殺研究会の改変は現代風だが、どちらにせよ薄っぺらい思想なのであんな程度で正解だと思う。ただ原作よりも大きく拾っている感じがあるので後篇でどう落とすかはここでも必要になってきている。
 健夫役のモロ師岡さんはよかっただけに、この世にすがるような生き恥を晒しながら人に話しかけ続けるダメ人間が一転、カッコイイ感じになっているのはちょっと残念。
 片目は原作では意外と出番少ないのでこの改変で少し前に出た感じがする。キャラクターも色のないところに色を塗った感じなので特に嫌な感じはしない。ただユースケ・サンタマリアそのまんまじゃん感は否めない。
 原作では宮木も3人目の主人公だと思うのだが映画では端役で残念。宮木のキャラクター自体が昭和的すぎるからか現代風に変えたときに残るものがなかったのかな?今の時代でも同じことで悩んでいる人はまだまだいると思うのだが。

 菅田将暉がかっこいい映画というと他にも数多あるけれども、今作はずば抜けていい。しかも内容的にターゲットは問わないタイプだ。観た回は割りと高齢の男性が多く、寺山という名に呼ばれた人が多かったのかもしれないが、男女問わずもっと若い人が観てもいい映画だと思う。
 後篇がどうなるのか。原作通りの終わり方をするのか、はたまたオリジナルになるのか楽しみだ。