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あゝ、荒野 前篇のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

あゝ、荒野 前篇(2017年製作の映画)
4.8
かつて母に捨てられた新次(菅田将暉)は、兄のように慕う劉輝と共に詐欺に明け暮れていた。そんなある日、彼らは仲間の裕二(山田裕貴)らの襲撃を受ける。そして、2021年の新宿。行き場のないエネルギーを抱えた新次は、劉輝を半身不随にした裕二への復讐を誓っていた。一方、“バリカン”こと健二(ヤン・イクチュン)は、吃音と赤面対人恐怖症に悩む男。新宿でいつも通り床屋のティッシュ配りをしていた健二は、ひょんなことから新次と共に“片目”こと堀口(ユースケ・サンタマリア)によってボクシングジムに誘われる。言われるままにジムを訪れた2人は、それぞれの想いを胸にトレーニングを開始する……。
寺山修司の唯一の長編小説を映画化した大作青春映画の前編。
敵を憎むことで強くなろうとする一方で、自分と似た心の空白を持つ芳子を愛し抜こうとする新次、父親に虐待され吃音と対人恐怖症を抱えた自分の弱さを越えようとする健二が、ボクシングを通じて自分の心の空白を埋め自分を変えようとボクシングに命を燃やす青春模様。オリンピック後に不足する介護職と自衛隊の人材の補充するための社会奉仕プログラムにより、格差が広がる荒廃した日本。夫の自殺のショックで新次を捨てた母親の京子、海外派遣中の隊員の自殺に責任を感じアルコール依存症になった健二の父親、性の快楽に生き甲斐を見出だしている芳子など、荒野のような日本で希望を求め足掻く群像劇。リアルで壮絶なボクシングシーンの数々、日本を覆う閉塞感をぶち抜く傑作青春大作映画前編です。母親と再会して兄貴分の仇の祐二への復讐心を燃やす新次、己の弱さの前で足踏みする健二、後編でどういう結末を迎えるか、楽しみです。
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