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あゝ、荒野 前篇のhiroのレビュー・感想・評価

あゝ、荒野 前篇(2017年製作の映画)
4.4
設定4/脚本4/役者5/映像音楽4/個性5
シリーズ評価:Ⅰ

ひきこまれたー。「社会派っぽいけど結局何が言いたいのかよくわからない」系の映画は苦手でしたが、この映画はよかった。

舞台は2021年、東京オリンピック後の新宿。介護問題や震災の傷跡といった現代の社会問題と外国人・家なき人々・娼婦といった新宿らしい喧騒。
某タレントが言ってました。「拒まれないのよ、あの町は。すべての人間を受け入れてくれる。」

一貫して暗い。ラブホテルを居抜き改装した介護施設で糞を漏らしながら徘徊する老人のシーンはスクリーン的には衝撃映像ではあるが、現実は既に介護業界の日常。臭いものには蓋をする、その蓋の下を描いた作品であり、"生きる気力"のない社会がそこに広がっている。
この手の厭世観は個人的にはうけつけないことが多いのに(不要なセックスシーンが多いのは残念だったが)、今回はなにか説得力があり「5年後って本当にこんな感じかも」と思う節も多々。

主人公2人もまた居場所がなくて新宿に身を寄せている者たち。片親をなくし片親に育児放棄されている点は共通。世間が生きる気力をなくしている中でボクシングに打ち込む二人の熱量こそが今作の見処。菅田将暉の演技にはずれなし、彼のオーラが最大限活かされていたと思う。

評判通りボクシングパートはその熱量にDVD視聴ながら周りが見えなくなるほどの没入観を味わえた一方で、サブエピソード、特にフェスパートはよくわからなかった。逆にアングラ的要素をサブに集約してくれたことでメインのボクシングが輝いて見えたと前向きに捉えることにした。

2018-3(3)
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