原作では主役がバリカンというところに、寺山修司の意識が現れている。
ボクシングによって他人と繋がりたいバリカンの心情を、中心に据えたところだ。
『あしたのジョー』主題歌作詞で知られる寺山は、そのマンガやアニメとは別にこの映画の原作を構想していたという。
闘うこと、世間に抗うこと、人生に抗うこと。そして、仲間をも倒すこと。
そのようなボクシングのエッセンスを捉えた原作が、まず優れている。
それを映像化したこの映画も同じだ。
自衛隊の海外派遣や、介護問題など、原作とは異なる現代的設定も気になるが、エッセンスは同じ。
ヤン=イクチェン、ほんとうに巧い。
モロ師岡といえば世界の北野武監督による『キッズ・リターン』ではないか。
ユースケ=サンタマリアが演じる「片目」もわかりやすい。ジョーにおける、丹下段平ではないか。