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あゝ、荒野 前篇の821のレビュー・感想・評価

あゝ、荒野 前篇(2017年製作の映画)
4.5
前後編両方鑑賞してからまとめて感想をしたためようと思ってたのですが、間に別の映画を見ることになったので取り急ぎ前編だけの感想文をば。

見てるだけなのに、シンジの呼吸に合わせてこちらの息もあがり、文字通り手に汗を握る。試合のワンカットごとに、感情が昂る。
なんやこの映画!!アツすぎる。衝撃を受けました…。

ストーリーの骨子となるエピソードは今のところ、わりとよくある感じではあるんですが (居場所を失った破れかぶれの若者が夢中になれる何かを見つける、弱小校(訳あり顧問つき)v.s. 強豪校っぽい構図、などなど…)。
いかんせんボクシングの試合シーンがアツすぎる。間の取り方やメリハリの効いた編集、絶妙なタイミングで入ってくるサウンド。そして、何よりも菅田将暉の表情。演技。鑑賞側を完全に取り込んで、のめり込ませてしまう圧倒的な存在感。ボクシングのシーンの見応えが半端ないです。映画を見てて、久々にこんな熱い気持ちになりました。

それと、全体的にキャスティングがバッチリハマっていて神懸かっていると思いました。皆さん一癖二癖あるキャラクターを演じていてるのに、それぞれがやりすぎず、でも抑えすぎずで全体としてとても調和している。登場人物がみんな魅力的。哀愁が漂いまくってるんですよね。作品としてのトーンがうまく仕上がっていると思いました。作品の世界観にのめり込んでしまった一つの理由です。

あと、全体としてよかったなと感じるのが、ディストピアっぽさが醸し出される近未来感。唐突な爆弾テロや、自殺防止フェスサイコ、そして経済的徴兵制しかり。
近未来と歪んだ倫理観って相性が絶妙に良いなと思います。
ただ2020年の今見ると2021年はすぐ先の未来すぎて、見るタイミング完全にミスったなあと思いました。2017年公開時に観たかったです。4年先なら、少し突飛なことでもまだ「ありえる」感が出るからなあ。

あと、原作未読なので、作品内で取り上げられてる要素は盛り沢山だし、映像として欲張りすぎてる感を抱いてしまいました。前半を見ただけでは、全体的に少し統一感のない感じがしたし、自殺防止キャンペーンのエピソードは浮いているように感じます。(近未来感を醸成する役割は果たしてるけど、あそこまで時間をかけられると、今のところ蛇足に見える。) 後編でどう纏まるのか。どう繋がってくるのか。とても楽しみです!

〜以下、他愛もない感想を箇条書きで〜
・シンジにフォーカスされてるシーンで、後ろでオロオロしたりシンジをめっちゃ心配するけんじがめちゃくちゃ可愛い。けんじ可愛いよけんじ。

・シンジの最初のセックスシーンが良い。「3年ぶり」に納得する、本能で求めるがっつき具合。

・あとシンジの「まじかー!!あの女まじかー!!」の叫び好き。(ピンポイント)

・ヨシコの表情がいいのよね…。男を見下して、騙眩かす顔と、ケンジに素を見せて甘える顔。

・ユウジの目が怖すぎ。

・キャスティングが良いと書きましたが、シンジとヨシコのお母さんだけ、雰囲気似てて中盤まで結構混乱してました…。監督のシュミ…?
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