【正義と信念】
ナチスといえばアドルフ・ヒトラーが一番有名ですが、次に名前があがるのはきっとアドルフ・アイヒマン。
600万人ものユダヤ人を強制収容所に移送させ、大虐殺の中心的役割を担った人物。
昨年も『アイヒマンショー』が公開されたことも記憶に新しいですが、今年の2月には『アイヒマンの後継者』(直接的にアイヒマンは関係ない)が出るなど、近年さらに映画界でも注目されているのかもしれません。
この映画は、検事長フリッツバウアーがいかにアイヒマンを追い詰めたのかという点を描く心を揺さぶる物語。
『1945年の敗戦で悪は滅んでいなかった』とバウアーは語る。
これはナチスの高官が未だドイツの要職に就いている事実を嘆いているのですが、1961年のアイヒマン裁判に至るまでこんなにも時間がかかったのは、多くの捜査妨害があったからなんですね。
バウアーを支えたのは若き検事のカール。
しかし、彼には秘密があり、それが足かせとなってしまう。
こんなにもバウアーが苦心したのかと思うほど、思ったように物事が上手くいかなくて捜査妨害が激しい時代だったんですね。
バウアーは正義を叫ぶが、果たしてドイツという国にとってアイヒマンを裁くことは正義なのか?
政治的思惑と、バウアーの正義がぶつかる瞬間を丁寧に、重厚に描いていると思いました。
まさにアイヒマン裁判を扱ったと言われる『ハンナ・アーレント』も見てみたいと思います。
『私が生きている限り誰にも邪魔はさせん。』
2017.1.19