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アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男のレクのレビュー・感想・評価

4.0
検事長フリッツ・バウアーはどのようにしてアドルフ・アイヒマンを追い詰めたのか。
諜報機関との駆け引き、国家反逆罪の危機、危険を犯してまで突き詰めた正義と尊厳を賭けた闘い。

フリッツ・バウアーがドイツという国の在り方、そして未来のために、ナチスの残党とどう闘い抜いたのかが、静かに力強く描かれる。
歴史を変えることの難しさ、正義を貫くことの厳しさ、これらを同性愛への弾圧と重ね合わせ丁寧に魅せた点も素晴らしい。

フリッツ・バウアーが劇中で語る「ドイツが誇れる偉人たちの誇りは彼ら自身のもので、我々が誇るべきものは我々自身が行う善行のはずだ。」
現在上映中の超絶大傑作『僕たちは希望という名の列車に乗った』とほぼ同年代の作品であり、国家反逆罪など描かれるテーマとも共通する。


フリッツ・バウアー本人の冒頭の語り出し。
「我々ドイツ人にとって、奇跡的な経済復興とゲーテやヴェートーベンを生んだ国であるということは、とっても大きな誇りになっている。
だが、その一方でドイツは、ヒトラーやアイヒマン、そしてそのお仲間を生んだ国であるというのも事実である。
どんな日であっても必ず昼と夜があるものだが、同様にどんな民族の歴史においても陽の部分と陰の部分がある。
私は信じる。このドイツの若い世代ならきっと出来まいことはないのだと。
過去の歴史と真実を知っても克服出来るはずだ。
だが、若い世代に出来てもこれがその親世代となると実に難しいことなのだ。」

全てはここに詰まっている。
ラース・クラウメ監督が映画を通して我々に伝えたいこと、過去と向き合い未来を見据えたメッセージだ。
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