Inagaquilala

BLAME!(ブラム)のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

BLAME!(ブラム)(2017年製作の映画)
3.6
劇場公開とNetflixでの配信が同時スタートしたアニメーション作品。アニメに関しては、ふだんは守備範囲外なのだが、その「同時」という話題性から配信で観賞。セルルックCGで描かれたキャラクターたちの魅力的な表情と斬新なアクションシーンに驚く。

セルルックCGとは、セル画でつくられるアニメ作品に似せてつくられた3DCG。守備範囲外とはいえ、これまで話題作は観てきた3DCGだが、いつも人形のような登場人物たちの表情や動作に違和感を覚えていた。なので、予備知識もなく、ただ話題性だけでこの作品を見るに至った自分としては、「セル」なのにアクションシーンの動きが素晴らしいくらいに感じていた。

観賞後、この作品に関するいろいろな知識を仕入れたところ、これが3DCGでつくられた作品であり、「セルルックCG」や「セルシェーディング」という言葉に行き当たった。なるほど、セル画でつくられたアニメだと自分が勘違いしたのも無理もない。そもそも「セル」のニュアンスを取り入れた3DCGなのだから、と納得した。

物語は、遠い未来、人間は何千階も続く「階層都市」のなかで、細々と暮らしていた。都市の全貌は明らかにされない。ただ都市が意志を持ち、人間たちを「駆除」しようというしていることだけは明らかにされる。

人間はかつてこの都市の主だった。都市は人間たちがつくり出したシステムだった。しかしある「感染」がきっかけで、人間は都市へのアクセス権を失い、都市は自ら意志を持ち増殖を始める。その結果が幾重にも積み重ねられた迷宮のような「階層都市」なのだ。

この「階層都市」の壮大な描写に、まず惹きつけられた。これまで観てきた実写SF作品の未来都市をはるか遠景に押しやる。これほど物語性を秘めた景色はない。展開される物語よりも先に、作品の持つ世界観そのものでもある、この階層都市に興味を抱いた。ただ、先にも書いたが、最後までその全容が解き明かされることはない。たぶん続編がつくられることが前提とされているからだろう。

その階層都市のなかを、世界を正常化するために必要な「ネットアクセス遺伝子」を探索してさまよう霧亥(きりい)というニヒルな戦士が主人公だ。彼は強力な武器を持ち、人類を「駆除」しようとする「セイフコントロール」などの敵と対峙する。このアクションシーンも作品の売りのひとつだ。3DCGならではの、意想外、思いもよらぬバトルが展開される。

実はこの作品はNetflixにより全世界に向けても同時配信されている。製作にあたったのは、海外作品でもその実力を示して、世界的にも注目されている日本のCG制作会社、ポリゴン・ピクチャーズ。彼らが開発してきたセルルックCGのアドバンテージを最大限に生かして、これまでにないクオリティの高いアニメーション作品を生み出している。物語が持つスケールの大きな世界観と相まって、まさに全世界配信にふさわしいというべき作品だ。

まずは配信で観賞したが、これは必ず劇場の大スクリーンで観たくなる。自分も劇場公開にも足を運ぼうと思っている。そういう意味で、今回の劇場公開とネット配信が同時というのもじゅうぶんに頷けるコンテンツ展開なのだ。
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