140字プロレス鶴見辰吾ジラ

BLAME!(ブラム)の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

BLAME!(ブラム)(2017年製作の映画)
4.0
”北斗の拳”も”攻殻機動隊”も・・・

「MAD MAX」や「ブレードランナー」の世界を何とか出し抜こうという気概を大きく感じるSFアクションアニメーション。人類の遠い遠い未来という舞台において、アニメ映画というパッケージングにおいて厚みのある原作の世界に放り込みながらも、100分少々のランタイムと浸透率を考えたプロモーション的側面の作り上げもかなり良かったと思います。冒頭の歪なマスクをつけた機動部隊的なスピード感と空すら仰げない灰色を基調とした重々しい大都市のなれの果てというワクワク感の集約のような繰り出し方は成功かなと思います。ただリスキーな部分において、SF世界設定の記号の配置と連鎖のさせ方がどう構成されるかは毎回この手のSFを見るにあたって不安な気持ちにとらわれる気がします。個人的な考えとして、SF映画の世界設定は、ある卓上ゲームがあって、そのゲームのルールを提示しながら、それ自体の戦略性を簡潔に伝え、そのルールを出し抜く手段を伏線やギミックによって隠しながら進め、簡潔さと巧妙な隠しとヒントをもとにゲームプレイをしていくという感覚があります。今作は、冒頭の大都市のなれの果てから、人類がテクノロジーの発展の末、イレギュラーな事態もしくは機械の反乱により、管理と支配の構図を逆転された世界というのがわかっていきます。2045年のシンギュラリティの末というよりも生態系の頂点が入れ替わった「ターミネーター」的世界観の遥かに先をいっているという構図に驚かされました。「猿の惑星」のような禍々しい管理×支配の逆転と、それは遥か昔の出来事を人類が認識しているという点から、新たに”神話”を生み出そうとしているのか?という目が離せないような集中力を引き出させてくれた気がします。”ネット端末遺伝性”というキーワードや”自動工場”というギミックに対して、それがかつての遺産と化しているほどの先の未来を描いているのもよりワクワクさせられました。人類が集落化して、メカとアナログな武器と未来の想像の追い付かない食糧を食すというアンバランスな歪さもまた良いですね。設定上が日本であっても今作の継承性を際立たせる舞台設定であるので悪くないですし、謎の旅人と偶然の一致からレジスタンス的な立ち回りが始まるのはどことなく「MAD MAX 怒りのデスロード」のようです。戦闘シーンの太鼓乱れ打ちのBGMも含めて攻めの姿勢を沸々と感じました。その中で、あきらかに気味の悪い能面スタイル+昆虫のような脚の動きをする敵のロボットの造形から、日本アニメらしい”萌え”を貴重とする美少女の混在した良い意味でカオスさが、”日本”ならではのオリジナリティなのだなと再認識もしました。声優陣も櫻井孝弘の寡黙ながら低音を効かせた機械的ながら着実に内なる炎を滾らせる主人公、物語の巻き込まれ役として修羅の国に首を突っ込んだような少女に雨宮天、「ゼーガペイン」のときからは想像がつかなかった大人のセクシーさを基盤において話す花澤香菜には、抑えた大人演技をすると埋没するリスクを孕みながらも感慨深さを感じてしまう。あと毎度この手の重要な位置のアニメ映画に着実にキャスティングされる洲崎綾という存在。そして何より個人的に最も好きな女性声優である早見沙織の投入タイミングは5億点つけたくなるようなSF的飛び道具かつアニメ的理想の具現化に鳥肌スタンディングオベーションでした。要所要所でSF映画の諸設定のギミック分散と、ハイスピードなアクションと重低音で放つ武器の使用シークエンスに爆破シーンの連続は圧巻です。この世界はあくまで作品世界内のほんの一部でしかない事実をうまく要約していることから、今作を足掛かりに「MAD MAX 怒りのデスロード」のその後のマックスの行方を想起なせるような終わり方と世界の片隅の英雄譚かつ遠い先の未来でリブートされた神話の構図に、冒頭で書いた既存のSF映画を出し抜こうという気概を感じる作品でした。ぎりぎりグッドシネマ届いてきました。