れんれん

禅と骨のれんれんのレビュー・感想・評価

禅と骨(2016年製作の映画)
2.5
ポレポレ東中野にて。

ドキュメンタリーとドラマを織り混ぜた手法で撮られている。あ、最後はおまけアニメも。

ヘンリ・ミトワという実在の禅僧の人生がテーマ。ドイツ系アメリカ人の父と新橋芸者の母との間に生まれ、1940年に父のいるアメリカにわたり、母の死後、日本に「帰国」した。いろいろあって禅僧なのだが、そのあたりは、アメリカで裏千家の世話をした縁で……とかナンだとかで、細かいことはよくわからない。

面白いのは、冒頭、彼を指して「風流人」だとかナンだとか、まあ、京都の関係者が誉めちぎる(ああいう人たちのカメラの前の言葉は、かえってウソ臭かった)。裏千家のトップと「禅」を語るシーンなどは、わざとやったのかと思うくらいウソ臭い。

そんな周囲の評価とは遠くかけ離れた「彼」を、カメラはどんどんむき出しにし、写し取っていく。特に、アメリカで生んで、勝手に日本につれていった子どもたちとの絡みでは、彼としては、風流とはほど遠い、お見苦しい姿ばかりで、寝室に引っ込んでいった(笑)

どんな家族であろうが、風流人だったら凛としているのかと思えば、まあ、人間はそんなもんだよね、という感じ。みっともないと気づいたヘンリも、どんどん機嫌が悪くなる。後の祭。人間臭さを素直に出せることこそ、到達した境地なのかもしれない(深読み?)。

そのあたりのリアルが、やっぱりドキュメンタリーはいいなと思わせる。尺が長くなるほど、ヘンリが撮りたかったという童謡「赤い靴」のエピソードが後付けになっていき、付け足しに見えてくる。それだけ、彼の人生という素材そのもののほうが面白い。

そう考えると、今作は、見つけてきた素材は面白いが、語るべき内容が既出のものが多く、新味を出すために飾る必要があり、それがドラマパートだったり、京都の寺の関係者たちのヨイショだったりした、ということか。これが書籍だったら、3分の1くらい読んだらバレるけど。

いちばん冷静だったのは作り手ではなく、ヘンリの家族だった、という落ち。

2012年にヘンリは逝去。
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