えんさん

ちょっと今から仕事やめてくるのえんさんのレビュー・感想・評価

3.0
疲労から駅のホームで意識を失う隆。そこに幼馴染を名乗る謎の男ヤマモトが現れ、偶然を装って彼を助け出す。早速飲みに連れ出すヤマモトだが、隆は幼馴染と名乗るこの男の存在を思い出せずにいた。パワハラが当たり前のように行われる隆の職場だったが、自由気ままなヤマモトと過ごすうちに次第に隆は本来の自分の姿を取り戻していく。しかしある日、隆はヤマモトは3年前に自殺していた事を知るのだった。。第21回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞に輝いた同名小説を成島出監督が映画化した作品。

パワハラやモラハラなどの言葉が聞かれ、景気低迷をしている中、大手の企業でも上場廃止で業務縮小、人員整理なども相まって、日本の職場環境というのは年々に厳しさを増しているのかもしれません。政府主導で、日本では馴染みがなかったプレミアムフライデーや一部企業では週休3日などの措置も取られているのも、少しでもそうした労働環境の厳しさを打開しようとの苦肉の策ともいえるのでしょう。そうした中、公開された本作は会社勤めが辛いと思っている方にとっては、何か救いを差し伸べてくれるような題名にも聞こえるのでは?とも思えます。いい作品ではありますが、この作品が困っているあなたを救ってくれるわけではないので、過度な期待は禁物かも、、と思える作品でした(笑)。

僕は今(2017年7月現在)は会社員という立場ではないですが、会社員を曲がりなりにも10年を超えるくらいやってきて感じたのは、会社はいろいろなキッカケは与えてくれるけど、会社は生き方を差し示してはくれないという極当たり前のことでした。興味がある業界に勤められる人は幸福ですが、そうでない人でも、学生のときとは違って、社会人とはこういうものだということを感じさせてくれる。ここ1年位1人で仕事をやっていて厳しいなと思うのは、会社と違って失敗は許されないし、誰も守ってはくれない。会社に所属していれば、取締役等の一部の人は別として、お金や時間、そして人という資本があって、会社員は会社という組織で守られている。その組織の中で、仕事を通じて、いろんな機会を与えられるのが会社というところだと思っています。もちろんその分、ノルマや目標、細かいところでは給与や就業時間など、制約はいろいろあるのかもしれないですが、それは個人でやっている人には得られない特権だと思っています。

話の方向がズレましたが、本作を観て感じるのは、会社という組織の中で埋没していると、そこだけが人生の全てと錯覚してしまうことが危険ということでしょうか。人生にはいろいろある。それは頭で分かっていても、自分自身が厳しい職場環境にいる中ではなかなか感じ得れないものなのです。職場から解放されて自由になっても、僕が感じるようにまたそこには違った苦しみも待っている。結局、どういう立場でも苦しみはあるのですが、何を引き換えに何を得、それをどう感じるのかによって、仕事から得られる幸せは違うのかなと思います。あまり、映画の感想には触れていないですが(笑)、本作はそうした人生の営みを振り返るキッカケにはなると思います。でも、その幸せの突き詰め方が、後半の物語の展開からいくとちと甘いかなとも感じますが。。ラストも「ショーシャンクの空に」っぽい感じになるのかなと思ったけど、ヤマモトの存在についての説明が冗長すぎて、ちょっと白けた感じになってしまうのもイマイチかなと思います。