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ちょっと今から仕事やめてくるのmazdaのレビュー・感想・評価

4.0
上司からのパワハラとストレスで自殺しようとする男の前に、幼馴染の山本と名乗る見に覚えのない男が現れる。タイトル通り彼は仕事を辞めるのだが、『ちょっと今から仕事辞めてくる』といえるような勇気がもてるまでを描く。
タイトルのインパクトに惹かれて観たいと思いつつも、想像のついてしまうありがちなストーリーにあまり期待値は高くなかったのだけど、どストレートで伝えてくるメッセージにシンプルに感動してしまう。

人身事故が起きて遅延する電車を待っていたりすると、"死ぬなら人に迷惑かけない方法で死ね"というのをたまに耳にするけど、そんなこと考えられる余裕があったとしたらそもそも死んでいないと思う。生きてれば必ずいいことがあるって私は思うけど、それって客観的な意見でしかなくて、本当に追い詰められて死にたくなった人は、今が全てっていうぐらい真っ暗で、この先なんて絶対見えてない。だからこそ、1人の力で立ち直るのは無理で、引っ張り上げてくれる誰かの存在が必要だと思う。迷惑かけずに生きてる人なんていないだろう。

私の知人にも自殺してしまった人が昔いたのだけど、私が知っているその人はそんなことをする人にはとても見えなくて、どれだけ苦しいきもちを押し殺して生活していたのかと思うと、気づけなかった罪悪感で胸が苦しくなった。自殺自体は間違った選択だと思うけど、死を決意するきもちが生まれてしまうことはせめれない。
大好きな『ダンサーインザダーク』でも、どうして?なんで?っていう疑問は結局言ってもしかたがないような、悔やみというより責めの言葉に感じてしまって、私はそれよりもまず相手の弱さを受け入れ、引きあげてくれる手を差し伸べれる人はいなかったのかなっていう自分への責めのきもちがまず最初にくる。いなくなってしまった相手の行動を振り返るよりも、今いる自分ができたかもしれないことを考える方がずっと前に向かっていると思うからだ。
今作の山本はそういう考え方をもつ人間だったと思う。そしてそれを考えで終わらせずに行動にすることができた。
みんな考え方も価値観も違うから、その考え間違ってるよっていってすんなり受け入れてくれるものではない。だからこそ間違いをとめられる人としての強さが山本には溢れていて、彼のその姿に涙がとまらなくなった。

そこまで追い詰められることはなくても、明日がくることが嫌になるほど苦しいきもちってみんな実は経験していたりして、そういうきもちを思い出しながらみると、この映画はちょっと耐えられなくなる。私も山本みたいなちょっとのきっかけを与えられるような人間になりたいって思った。すごく考えさせられた。

キャスティングセンスもよかった。あんまり意地悪い役のイメージがない黒木華(←最近までずっとハナって読んでた(° °)!)とか関西感がない福士蒼汰とか、以外な役というのが最初の印象だったけど、監督が彼等に新しい役のきっかけを与えてる感じがした。あといつも憎たらしいおっさん役ばかりのイメージな吉田鋼太郎さんだけど、とてもファンなので理不尽パワハラ部長の力のはいった演技が何よりも釘付けだった 。今作の見どころの1つといえるでしょう。「んっだその歯磨きのCMみてーな笑顔は!!」っていう罵倒がすき。。。彼もまたストレスでパワハラとかするようになったのかなって思っていたから、最後主人公が部長にかける優しい一言は、彼の変わるきっかけになってほしいなと思った。
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