ようやく日本でも公開となったコリアン・ゾンビ・パンデミック・パニックホラー!
化学工場から漏れた「何か」によって生物が凶暴なゾンビとなり増殖、韓国の各地でパニックが拡大してゆきます。
まだ何も知らない主人公は娘と共に釜山行きのKTX(高速鉄道)に乗車しますが、発車直前に感染者が紛れ込んでしまうのでした。
地獄と化した列車の中で、生き延びる術を模索する乗客たち。
しかし状況は刻一刻と、最悪な方向へ向かいつつあるのでした。
冒頭、「ゾンビーワールドへようこそ」かよ!と思いましたが、◯◯が白目をむくタイトルインからして目を引く出来。
不穏な空気を漂わせながら、主人公の性格や取り巻く状況を描き、後にメインとなるキャラクターたち各々をサラリと紹介する流れがポンポンとテンポよく進みます。
ゾンビが発生してからもダルさを感じさせず、緊張感を最後まで維持し続ける強靭な演出と脚本が見事という他ないです。
一人ひとり散ってゆく展開も自然で無理がないし、少ないながらもはられた伏線、登場人物たちの心情、次々と襲いくる危険なシチュエーション・・・どれをとっても非常に巧み。
魅せ方も凝っていて、かなりアグレッシブでダイナミックな動きをするゾンビの恐ろしさが充分に伝わってきます。
効果音オンリーでわざとそのものズバリを見せずに、怖さや切なさを描写している箇所(例えば野球部員と彼女のところとか)が、ゾンビによって血まみれにされるような残酷カットよりも印象深かったです。
ステレオタイプな「悪役」も出てくるのですが、誰もがただ生き延びたいだけで、「悪役」も実は普通のどこにでもいる人間だったんだと分かるのも心に残りました。
支離滅裂なセリフと共に主人公に助けを求める哀れな姿は「とんでもなく酷いオヤジだったけど、思えばこいつも可哀想なヤツだよな」と思わせてくれました・・・けれど、かなり人間性を疑うことばかりやっていたので、「はよ死ね!」とも願いましたよ(汗)
そして本作は、誰かを守るために身体を張る姿に泣ける映画でもあります。
一見粗暴なオヤジが誰よりも頼りになったり、そんなオヤジが生まれてくる子供に名前をつけるシーン・・・
人の涙腺をどんだけ決壊させる気ですか!
主人公も娘が生まれた時のことを思い出すシーンがあるのですが、これも反則でしょう!
子供を持つ親には特に響きますよ。ジーンときます。
ラストもまた泣けるので、しまいにはホラー映画観ている気分じゃなくなってきましたよ!
とは言うものの、やはりそこはゾンビ映画には違いなく、わらわらと「ワールドウォーZ」みたいに折り重なっちゃったりするゾンビの大群を見るにつけ、ひょええ〜!と、ゾンビ好きの心が騒いじゃって仕方がないのでした。
しかし、たぶん見せたいのがゾンビ映画といえばコレ!みたいな内臓グチャグチャやら首ぶっこ抜きではないためなのか、グロさは控えめです。
そもそもゾンビというよりキチガイ噛みつき魔といったほうがピンとくるほどで、とくに食人嗜好というわけでもないのでグログロしいのを期待するのなら微妙かもしれないですね。
それにしても、何故、本作レベルのゾンビパニックが日本では撮られないのでしょうか?
コミックや小説など他の媒体なら既に良質なゾンビものが発表されているのに対し、邦画では低予算のB級作品でしかゾンビを真正面から扱っていない現状が哀しい。
一定の線を越えているゾンビ邦画は、「アイアムアヒーロー」ぐらいでしょうか。
そもそも人気コミックが原作じゃないとダメなのではなくて、映画オリジナルで作って欲しい。
やる気と才能のある作り手は間違いなくたくさんいます。
あとは予算なのか、それとも企画を通してくれるお偉いさんなのか?
一番の近道は世間が求めることなので、そういった需要が国内市場にあってほしいと切に願う所存です。
とにもかくにも、ソンビ映画史上で今後、もっとも重要な一作になる可能性を秘めていると言っても過言ではない傑作!
こんな駄文を読んでいるヒマがあったら、二回でも三回でも観て頂きたい!
マジでマスト、超オススメです!
劇場(109シネマズ湘南・字幕)にて