げんき

新感染 ファイナル・エクスプレスのげんきのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

まず一言。ゾンビの動きが甲本ヒロトに似てるって言ったの誰だよ。その通りじゃねえか。全部甲本ヒロトに見えるせいでゾンビの恐怖は0。すべてギャグシーンに見えてくる。ゾンビ苦手な人に勧める際には丁度いいくらい表現。


傑作。
利己主義・差別的目線の持ち主と、思いやりや助け合いの精神の持ち主、それぞれの人物が徹底的に対比されている。ゾンビの恐怖を前に他者に対してどのように接するのか。普段の生活における無意識の行動が極限状態で現れる。
仕事人間で自分のことを考える主人公ソグ。彼の娘スアンは偏見や差別的意識はなく、みんなで譲り合いを大切にしている。それに引き換え周囲の大人は、主人公同様自分のことを第一に考え、社会的弱者に対する同情などさらさらない。女性・子ども・老人・妊婦、優先席に座らせてもらえそうな人がこれでもかと追いやられる。「本当怖いのはゾンビなんかじゃなく人間だ」という、使いまわされたフレーズが繰り返される内容。

はじめは利己主義側の人間だったソグが、赤の他人の手助けによって娘を助けられたことで、次第に人と手を取り合う人間へと変化していく。中盤、大尉と連絡を取り自分と娘だけ助かろうとした。そこから彼はどんどん変わる。また彼の周りにいた人々も、自分のためじゃなく他人のために動く。妻のため、彼女のため。唯一ホームレスだけ、自分が生き延びるためにいる。戦力でもない彼を責めることなどなく、助け合う。

バス会社の常務率いる利己主義グループは自分たちの世界を1つの車両に築き、主人公らグループを差別する。そして車両と連結部、二つの世界を作り、その間は目隠しした扉で閉ざされる。結局常務たちの車両は統率がとれず、絶望した一人の力で欲望に飲まれる。

電車に群がっていくゾンビのロングショットは、クモの糸にすがる様。最後に元利己的人間のソグは、欲望・差別の塊と対峙して、見事勝利を収める。父親の成長物語だった。こどもの日に何をプレゼントしたかも覚えていなかった父親が、初めて真摯に娘のために戦った数時間。その姿を見た娘も、父親を初めて尊敬し、お互いに向き合うことができた。


一見山田孝之を太らせたような人物が、素手であんなにゾンビを圧倒できるなんて。途中古代ローマの戦士を思わせる盾と警棒を装備して奮闘。ホームレスも最後には少女と妊婦のために体を張る。ベストシーンは無双おっさんの散っていくとこかな。

ラスト、ソグの回想シーンはアニメっぽい。
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