つるみん

ロシアのキツツキのつるみんのレビュー・感想・評価

ロシアのキツツキ(2015年製作の映画)
4.2
言葉が出ない。

2015年のサンダンス映画祭ドキュメンタリー部門で審査員賞を受賞した作品。

1986年4月27日。あまりにも有名なチェルノブイリ原子力発電所4号炉で史上最悪の原子力事故が起こった。

4歳の時にチェルノブイリ原子力事故に遭ったウクライナのアーティスト、アレクサンドロリッチ・フョードルが、事故は旧ソ連時代に膨大な費用で建造された軍用レーダー 〝Duga-3〟 の存在を隠蔽するために、旧政府が引き起こしたのではないかと仮説を立て、その真相に迫るドキュメンタリー映画。

逮捕されるかもしれない。
射殺されるかもしれない。
息子が殺されるかもしれない。

様々な不安を押し切り彼は真実だけを訴えかける。事故から30年、あくまで仮説に過ぎないが説得力のあるフョードルの意見や映像構成、緊張感溢れる当事者とのインタビュー。こんなにも集中し観るのに夢中になった80分間はそうそう無い。

もちろん僕はこの事故が起こった当時は生まれていない。学校の歴史の授業でかじった程度の知識である。ウクライナ情勢はなかなか複雑で一言では語れないが本作は歴史も踏まえ丁寧に説明してくれる。

現実に向き合いつつアーティスティクな映像も含まれるためフョードルがジャーナリストでも専門家でもなく1人のアーティストである事を忘れることはない。

あくまで仮説である事を忘れず冷静にこの作品と向き合い彼のプロパガンダに惑わされず自分の意見を持つことも大事であると思った。
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