グラッデン

エルネストのグラッデンのレビュー・感想・評価

エルネスト(2017年製作の映画)
4.0
タイトルにある「エルネスト」はゲバラのファーストネームであり、ゲバラがボリビアで共に戦った日系二世の青年・フレディ前村に授けた名前である。

物語は医療を受けられない人々のために故郷からキューバの大学に留学した前村が、仲間たちや革命の指導者たちとの交流を中心に描かれる。

寡黙で真面目なフレディが、入学直後に直面したキューバ危機を経験し、カストロやゲバラの言葉に触れ、そして母国・ボリビアの異変を受けて立ち上がる軌跡からは、同じ20代の頃にキューバ革命に奔走した若き日のゲバラの足跡を彷彿とさせた。

上記の描写、あるいは作品冒頭に描かれるゲバラの広島訪問にも共通するが、本作ではゲバラを「革命の英雄」として描くのではなく、彼の影響を受けた人々を中心に描くことで「インフルエンサー」として側面を映し出したのは印象に残りました。

当方もゲバラ関連の映画は何本も見ておりますが、このような形で彼のカリスマ性を描くのは新鮮な切り口だと思いました。今年で没後50年を迎えるゲバラですが、彼の言葉が今も語り継がれるのは、まさに前村のような人々の存在が多くいたからではないかと。

また、主演のオダギリジョーの熱演も印象に残りました。当たり前ではあるが、台詞は全て現地の言葉となるが、民謡の歌唱もこなすなど、見事に前村を演じていたと思います。