るるびっち

密林の怪獣群のるるびっちのレビュー・感想・評価

密林の怪獣群(1938年製作の映画)
3.3
『キングコング(1933年)』の影響で作られた形跡があるとのことだが、むしろ『類猿人ターザン(1932年)』の影響を感じる作品。
大都映画製作の無声映画(サイレント)。大都映画というのは、ロジャー・コーマンばりに低予算映画を増産していたらしい。
奥秩父山中に類猿人が居た!! という話(東京近郊に!・・・)。
類猿人といいながら衣服を来て住居も持っている。しかも普通にしゃべる。
類猿人の母親は眼鏡もかけてるし、ちゃぶ台もある。『巨人の星』の飛雄馬親子と変わらない生活レベルだ。単に貧乏庶民ではないのかと思うが違う、れっきとした類猿人らしい。つまり・・・人間じゃないのね(笑)。

それでハイキングで山中に入った美女を襲う山賊から、類猿人の兄弟が美女を救う。お約束通り、兄弟は美女を好きになるが、男・・・いやオス二匹に、メス・・・いや美女一人なので兄弟喧嘩に発展。
美女はおデブの弟より精悍な兄の方が好みらしい。「だってワイルドだから!」確かに類猿人だからね。それ以上ないワイルドさだよね・・・
しかしアッサリ美女に「お友達だと思ってたの、そんなつもりはない」と言われる類猿人。人として好意があるレベルだったのだ・・・人間じゃないけど。
優しくされてすぐ勘違いする中ニレベルの類猿人・・・(中二男子にとって「お友達だと思ってたの」ってセリフほど残酷な死刑宣告はないね)。
山に入るのに水着まで用意して滝壺で遊泳する遊び上手な美女に、恋愛免疫のない野生なだけの中二類猿人兄弟はイチコロですわ。
都会の女は野獣より手ごわい。可哀そうな兄弟、爆笑・・・いや号泣です!!

色々あって兄に悲劇が起こる。それで傷つき、世間を(女の怖さを?)知ったおデブの弟が「俺たちは何も感じず何も考えない、それが俺たちの生き方だったんだ、なのにそれを破るから、こんなことに、兄貴ゴメン」ここはマジ涙腺やばい!!
何も感じず何も考えないで生きる決意って・・・なんて寂しい。
だけど弟はそのあと都会へ修行に出る。アレ? 何も考えないのでは? そもそも類猿人だから山に隠れて生きてたんじゃないの? ワザワザ人間の居る都会に?
すべての疑問をあざ笑う、快活な大都映画なのでした。
いやー、無声映画っていいもんですね(笑)。
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