RyoS

アンダー・ヘヴンのRyoSのレビュー・感想・評価

アンダー・ヘヴン(2015年製作の映画)
4.1
不真面目でダメな(でも活発な)兄と真面目で大人しい弟を中心とした物語。雰囲気はエデンの東に似ているが、兄が、親から愛されずに同情したくなるようなキャラではなく、むしろ弟の方に共感したくなった。これは弟がいわゆる“できる“奴ではない(ただ真面目なだけ)こと、さらに兄が嫌われる原因が納得のいくものだったからだろう。エデンの東がジェームス・ディーン同情物語なら、こっちは兄の心の成長物語であり、両者は状況が似ているだけで、焦点が違うのである。

この類の映画は心理描写ものであり、「誰が何したか」という表面的な行動そのものにはあまり意味がないので、理解はたやすくない。さらにこの映画はキルギスの風習が強く映り、また会話も少ないので、余計に分かりにくく感じた。そしてその分かりにくさこそが、作品の独特な雰囲気、奥深さを出していると思った。

ショットに強いこだわりを感じた。会話が少ない分画で語らせる、これこそ芸術という名の映画の真髄だと思った。Hollywood映画は雄弁である。名セリフをあげたらきりがない。しかし沈黙は金である。3本観た中央アジア映画はどれも言葉は少なかった。今までに観た事のある(といっても数本しか観たことがないが)ロシアやスウェーデンの映画もそうだが、ロシア近辺(といっても広大)の映画はHollywoodのようなentertainmentとしての映画の対極にあり、ヨーロッパ(主に西欧)ともまた異なる、より芸術的で描写のこだわりが強い映画だと感じた。

中央アジアの映画を3本観たが、どれも大自然がとても美しい。家こそ簡素で質素であるが、大自然自体が村や民族の大きな家のようだった。めっちゃ引きのショットが多かったのは、この開けた大自然故だろう。
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