モウドクウサギ

スプリットのモウドクウサギのレビュー・感想・評価

スプリット(2017年製作の映画)
4.7
ヴィジットがあまりに素晴らしいババア映画だったため、期待値が上がっていたが、なかなか見応えのある、練り上げたシャマラン・ムービーを堪能できた。シャマランは、やはり「自身の根底にある恐怖や強いトラウマに、改めて向き合い、乗り越える」シナリオが毎度主軸となっているが、今作もその点に着目したい。多重人格の男扮するマカヴォイの怪演は言わずもがな、対峙するアニャの脆さと凜とした芯の強さが共存したような美しさも眼を見張る。ホラー的演出もあるが、個人的には人間の奥深さやキャラクターに対する興味が牽引力となっているように感じる。その証拠に、監禁されている少女らの視点とは離れたカットが度々差し挟まれ、その男の正体や過去にフォーカスしていくからだ。したがって、純ホラーを期待すると肩透かしをくらうかもしれないが、ジャンルは「シャマラン映画」としか言いようがない。唯一無二の独特の毒々しい臭気を放つ今作は、映画の面白さや奥深さに気づかせてくれる。