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スプリットのmeのレビュー・感想・評価

スプリット(2017年製作の映画)
5.0
監督、俳優、予備知識まったく無いまま観賞。
アンブレイカブルも未鑑賞だったけど、marvelのように前作を観てないから本編が理解できない、ということはないです。

CMを見て
変態に捕まった女子高生の脱出を描いた
割とよくある単純なパニック映画

だと思ったら…全然違った!

ここからはネタバレご注意。
(文章めちゃ長いしあんまりまとまってません。)

最初に感じたのは何よりDID(解離性同一性障害)の興味深さ。
多重人格というのはどういうモノなのか、ある程度知っていたつもりだったけど

人格によって、
・コレステロール値が上がる
・糖尿病になる
・アレルギーを起こす
・力持ちになる
・視力を失ったり、また得たりする
・違う人格が2人同時に出てくると、左右両方の手でそれぞれ違う文章を書く

などなど、耳を疑うような症例がたくさん出てきた。

(あまりにも突飛すぎて、どこまでが本当のことかわからないので、じっくり調べてみようと思う)

それだけでも十分面白いのに、さらにその先、
DIDのまだまだ解明されてない謎な部分に膨らみを持たせ、
人格を超えた妄想であるはずの存在(獣:ビースト)を怒りによって具現化してしまう、というオカルトに発展させていくのが非常に面白かった。

(硬い皮膚、怪力、駿足…思わずX-MENが浮かびました)



「DID患者は欠陥があるのではなく常人より優れている」という考え方はとても好き。

いくらトラウマがあって、自己防衛の為とは言え
何人もの人を頭に住まわせると言うのは、よほど器用じゃないとできない。

天才的な想像力があってこそ。
それが、芸術に繋がることもあり 時に凡人には生み出せないものを生み出す。医学的な可能性に満ちている。

精神科医が、DID患者に惚れ込んだのも頷けます。


しかしながら、精神科医のあり方には少々疑問。

誘拐事件の前、決定的な出来事が彼の身に起きたことにいち早く気づけなかったのは最大のミス…

軽いノリで生きる女子高生2人との接触(道行く男に胸を触らせて反応を楽しむ、悪ノリ、仲間内の度胸試し的な)により、突然一方的にからかわれたことで
今まで抑えていた感情(人格)が顔を出し…
誰かに守られてぬくぬく生きる人達に対する底知れぬ怒りが大爆発。

ここまではっきりしたキッカケがあって3日間怒りっぱなしだった、というところからも十分に異変を察知できたはずですが、

模範的な10年を送ってきたという彼にかける信頼が、精神科医としての腕を鈍らせたのでしょうか…。
DID患者が持つ危険性をスルッと見逃してしまったという落ち度。
あれだけ洞察力の鋭いおばあちゃんがナゼ?!感は否めない…

そしてもっと突っ込ませてもらうと
初めて会う人格の時に涙まで流して喜んでいたのに違和感。
DID患者にとって、いつも出ない人格が出てくる時というのは緊急事態であり、決して喜ぶべきことではないのに。えらく呑気だなと。

そして「全部の人格を大切にしたい。」的な発言。
何横並びに考えてんだ!一番大事なのは本人(ケビン)の人格だろぉぉぉ!
ケビンはどうしたよ?!
バリーが外で上手くやってるからって、ケビンをほったらかしにしやがって!もう何年もケビン相手にセラピーなんかしてないんだろ?!と力の限り突っ込んでしまった。

そもそも主人格が本人じゃない(何年も眠らされている)時点で、もう少し治療が必要なのはあきらかではないか…

名前を呼ばれて、何年かぶりに出てきたケビンは、あまりにも悲惨な状況を目の当たりにすることになる。
彼はただ、バスに乗って出かけている途中だったのに…。
見に覚えのない罪なのに自分を殺してくれと頼む姿は、とても痛々しく可哀想だった。

あの一瞬でしか、ケビンを知ることはできなかったけど
少なくともこんなことは望んでいなかったのだと思う。きっと自分自身に只ならぬ恐怖を感じていたはずだ。

ケビンに自殺願望があって、死ぬのを食い止めるために別人格に切り替わって眠らせたとかならわかるけど、彼はその時おそらく普通にバスに乗っていた。

ケビンは弱いから眠らせてるとしか説明されず
詳しくは描かれてないからわからないけれど
精神科医が日頃からもっとケビンと対話してあげていたら、と思わずにはいられない。


…悲惨なケビンを想うとつい感情的になり脱線して、精神科医のあり方を真面目に考え込んでしまったが
どうしたら食い止められたかなんて 本当はそんなことどうでもよくて、
この映画の一番の醍醐味は、最初にも言ったようにもっと別のところにある。(ケビンよ、ごめん)


「DIDの力で、人はどこまで進化できるのか」
デニスやパトリシアの抑えられない好奇心や憧れ、夢、期待はとても強い。
怒りはそのためのエネルギーでしかない。
全ては単なるキッカケに過ぎない、そう言っていた。
キッカケになった女子高生2人には、きっと感謝すら覚えているほどだと思う。

虐げられた自分を守るために使っていた力。そのまったく別の使い道。
保守的から革新的に。
自分が素晴らしいモノになれる可能性を彼らは見逃さなかった。



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ビーストが面白いのは、悪人ではなく
恵まれている人間を排除するという思考。

苦しみを糧に悪を制するというのは、ヒーローものにはよくあることですが
幸せで目障りな人間を生贄にして殺すというのはかなりクレイジー。

ビーストは「苦しみを味わったことのない人間は、生きる価値がない」
と定義していたけど、それは逆を言えば苦しみがないと生きられないということにはならないだろうか…

その条件でいくとしたら、悪は絶対必要になってくる。
苦しみに依存しなければ存在できないなんて。本末転倒ではないか…
そこらへんがどうも腑に落ちない…

ビーストの着地点はどこへ?

しばらくは自由に暴れてもらう的な発言があったので 今後いろいろ事件を起こしそうですが、
恵まれた人間プラス、悪人を殺していくスタイルでいくのか……?
ビーストの信念と行動が気になるところ。



最後、身を裂くような苦しみを経験したものにしか生きることは許されないのだという極端な考えで暴走するビーストに、長年虐げられていた少女は、祝福を受け励まされた。

ビーストが彼女の存在価値を強く肯定したのは紛れも無い事実だが
それによって彼女が奮い立つかどうかまでは描かれていない。
現実の多くは誰も助けてくれない。世の中はそんなに甘くない。自身で問題に対峙し、解決しなければいけない。
リアリズムをハッキリと突きつけられた瞬間だった。
ビーストはヒーローなんかではない。


薄着な他の女子2人と違い、虐待の傷を隠すため 日頃から厚着していて、脱げ脱げ言われてもなかなか肌の露出に至らず、最後の最後で痛々しい傷があらわになる…という皮肉な演出がいい。

彼女の強く澄んだ瞳が印象に残っています。聡明さが滲み出る、良い女優さんでした。

言うまでもなく多重人格を演じる俳優の表情の豊かさ、仕草の細やかな使い分けは凄かった。目が離せない。



女子高生誘拐、どうしてもエロくなりがちな設定で
性的描写は避けられないかと思いきや、
そういったものがないのには好感が持てた。
ロリコン変態を描く際も、おっさんのパンイチや子どもがボタンに手をかけて脱ぎ始める瞬間、といったシーンはあっても
チラッとみせるだけですぐに場面が切り替わるし、ダイレクトにエグさを見せることはない。でもしっかり想像できる。

目を背けたくなるような虐待シーンもないが、母親の声色や表情で、酷く虐待されてきたということがわかる。

極力エログロな映像を使わないことで、視覚的な刺激を減らし、話の焦点がブレない見せ方をしている。

レビューで下着姿がエロいと言ってる方を多数お見受けしますが、
これは最後の演出(虐待傷を見せる)に必要なエロ…
できることなら反応しないで頂きたい。集中集中。笑




長くなるのでココからは箇条書き↓

▶︎冒頭で幾重にちらくつ文字を安っぽい作りだな〜としか思っていなかったけど
エンドロールの文字が人格分の24分割だったのを見て、ああ!と思う。

▶︎シックスセンスの監督だと知り、なるほど どおりで面白いわけだと納得。

▶︎観終わった後で監督の写真を拝見。監督、劇中に出ていましたね。精神科医のいるビルの管理員のおっさん。
監視カメラの映像を精神科医と一緒に観ていた。ジャンクフードを食べるのは軽い自殺願望があるからね、とブラックジョークをお見舞いされていた。


▶︎DID関連の映画として、アイデンティティーという映画がある。
DIDという設定をとっておきのオチに使っているのに比べ、この映画は最初から「僕はDIDです!!!」と言わんばかりに始まる。そこが目新しいと思う。


▶︎続編ミスターガラス…
(グラス?ガラス?あいまい)

絶対観よう。
アンブレイカブルも観てみよう。

エンドロール後の告知を最後まで観ずに劇場を出る人が多くてもったいない〜。
トイレかな。笑