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ウィーナー 懲りない男の選挙ウォーズの小のレビュー・感想・評価

3.4
スマホなどを使って女性と性的なメッセージや画像をやりとりする「セクスティング」という性癖が発覚し、連邦下院議員を辞職したアンソニー・ウィーナー。その2年後、再起をかけて立候補したニューヨーク市長選で、なんと、あろうことか…。その一部始終を、ここまで映しちゃっていいの、というくらいさらけ出したドキュメンタリー。

個人的にはあまり好きではなかった。選挙戦の裏舞台がわかるという意味においては貴重な映像の詰まったドキュメンタリーと言えるけれど、ウィーナーが魅力的ではなかったから。

弁が立ち、相手を言い負かすスキルは一級品。ルックスもまずまずで、支持者を熱くさせるアピールもお手の物。奥さんはヒラリー・クリントンの右腕。オバマに続く民主党のエースだったらしいし、スキャンダルさえなければ、大統領になったのかもしれない。

しかし、彼は自分の恵まれた才能を頼みにしすぎて、失敗を踏まえ自省するということがない、1ミリも変わろうとしない、というような印象を受ける。

どんな状況に陥ってもめげない。どんなに周囲から引っ込めと言われても頑張る。それはそれで立派だとは思うけれど、自省が感じられないのはどうなのかと(私個人の感受性の問題かもだけれど)。この点は好き嫌いの問題で、こういう人を外野から見ている分には面白いけれど、推したいかと問われたら、推したくない。

撮影を中断せず、最後まで続けた理由を「等身大の自分を見て欲しい」と話す彼から自分が感じるのは、自己顕示欲。ひょっとしたら、もっと深い葛藤のすえの決断だったのかもしれないけれど、そういうことがあったのだとしたら、このドキュメンタリーは物足りない。

週刊誌の中吊り広告を真似たフライヤーに象徴されるように、この映画は結局のところ芸能ニュースの延長線上にあるドキュメンタリー。アメリカ国民、ニューヨーク市民ならとても面白く、満足度も高いかもしれないけれど、自分が思ったことは、SNSもほどほどに、くらいかな。

ウィーナーの奥さんがヒラリーの右腕だったことだけでなく、ヒラリーの人気失速の要因となった私用メール問題は、FBIがウィーナーを捜査した過程で浮上した。

つまり、ウィーナーは、間接的にトランプ大統領誕生を後押ししてしまったわけだけど、過去のスキャンダルをもろともせず、大衆のご機嫌取り政策を主張して選挙戦に勝利したトランプ大統領は、ウィーナーが目指すべきモデルなのかもしれない。

他人に配慮せず自分の欲望を堂々と主張し、実現することを支持する人が多数を占める…。ウィーナーの復活、アルと思います。
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