豚

WE ARE Xの豚のレビュー・感想・評価

WE ARE X(2016年製作の映画)
4.0
日本の誇るモンスターロックバンド、X JAPANの軌跡を追ったドキュメンタリー。
テーマとしてはXならびにX JAPANではあるが、リーダーであるYOSHIKIの半生記と言い換えても問題ない内容。
それほどYOSHIKIが誰よりもこのバンドを愛してやまないのだということが、ひしひしと伝わる90分だった。

ファンならば必見、というかそもそもファンであることが前提の内容であるため、バンドを知らない人が観てもあまり感想を持たなそうな気もする。
ただ、日本を代表するがゆえのアイコニックな彼らの情報はセンセーショナルなものが多く、hideやTAIJIの死、ToshIの洗脳等、事実として知れ渡っているものについてより深く知りえるという意味では、ファンじゃない人でもかなり興味深いのではないかと思う。

個人的にもっとも印象深かったのは、TAIJIの脱退についてYOSHIKIが語るシーンと、一台のピアノを前にYOSHIKIとToshIが子供のころのエピソードを語るシーン。
前者はあまり見たことのない、YOSHIKIの非常に複雑そうな表情と、「(脱退した理由は)死ぬまで言うつもりはない」とひどく悲しそうに呟いていたのがとても印象的だった。
後者は、洗脳や仲間の死など、バンドとして、人としてさまざまなものを抱え、乗り越えた末にようやく見せたお互いの笑顔が交わされるシーン。
無邪気な話題で楽しそうに話している二人を見て、X JAPANのYOSHIKIとToshIではなく、林佳樹と出山利三という幼いころからの友達にようやく戻れたのではないかなと思わず感動させられた。

全編を通じて、おもにYOSHIKIの口から語られるため、YOSHIKI視点のエピソードが多く、どれだけYOSHIKIがバンドを大事にしていたか、どれだけ苦労をしてきたのかがよく分かります。
正直に言えばもうちょっと他メンバーの話も聞きたかったですが、XといえばYOSHIKIのプロジェクトという一面もあるので、これはこれで良い作りだったのではないでしょうか。
hideについて語るシーンでは、やはりというか胸が熱くなります。
93分と非常にコンパクトながら、語られるエピソードのどれもが濃密であるため、満足感は高いです。

過去のお宝映像やバックステージ映像なんかも多くあり、恐らく初出しのものもいくつかあるのではないだろうか。
色んな意味で貴重な作品です。
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