凛太朗

WE ARE Xの凛太朗のレビュー・感想・評価

WE ARE X(2016年製作の映画)
3.4
まず、個人的な話なのですが、僕はギターを弾く人間でございまして、音楽の道を志していた人間です。いくつかのバンドではバンマス、所謂バンドのリーダーもつとめてきました。
ある年代以降の日本の、特にビジュアル系と呼ばれる文化に触れてる人間は、その殆どがX(JAPAN)からの影響が、直接的にではなくてもあると言っても過言ではないでしょうし、個人的にも大きな影響を受けています。
Xとは何か?それは僕にとっての音楽であったり、音楽を通した人生の何割かです。
メンバーの死や脱退、YOSHIKIの音楽性や考え方など、共通点や影響がいくつもあります。自分を勝手に重ねているだけとも言えますが。

X JAPAN、そしてXのリーダーであるYOSHIKIのファンとしてこのドキュメンタリー映画を観た時、ある程度の感慨深いものはあります。
YOSHIKIとTOSHIの出会い、呉服屋を営むYOSHIKIの父の自殺、TAIJIの解雇、海外進出、挫折、TOSHIの脱退、解散、HIDEの死、TOSHIの洗脳騒動、再結成、etc…
そういったYOSHIKIの壮絶な人生が、Xの名曲と共に語られていきます。

ただ、それ以上でも以下でもない。
悪く言えば、結局はYOSHIKIによるYOSHIKIのためのプロモーション用映画。
ここで語られていることの殆ど全てが、ファンなら既に知っているであろうことばかりで、その一つ一つのエピソードが掘り下げられているわけでもなく、駆け足で美化しながら語られていくだけです。
ノンフィクション作家の小松成美さんが少し出演していますが、この人の著書なり、その他の自伝めいた本などで、XなりYOSHIKIなりHIDEなりTAIJIのエピソードはもっと深く掘り下げて書かれています。
ただこれは、ファンの一人の目線の話であって、特にXやYOSHIKIにこれまで興味がなかったという人にとっては、知るための一つのキッカケになるんじゃないですかね。
なんせフォトジェニックな人であり人達ですし。
それにしても93分で描くには短すぎます。

YOSHIKIが自主レーベルであるエクスタシー・レコードを立ち上げることになったきっかけ、インディーズ時代に自主制作で出したアルバム『VanIshing Love』が売れなかったらどうするつもりだったのか、どうして売れるという確信があったのか、TAIJI解雇の理由、世界進出の挫折など、もっと深く描けたのではないか。
この辺はYOSHIKI自身、自分のイメージを守るために描かなかったんじゃなかろうかと思ってます。
つまり、真に迫ったドキュメンタリーにはなっていないんじゃないかと。
YOSHIKIという人間のX JAPANに対する思いを描いている映画でもあるので、YOSHIKIの他のプロジェクトに対しての言及がなかったのはかまいませんが。

ただ、この映画の最後の方でYOSHIKIが語る言葉は、少し本音が漏れたというか、そうであってほしいと思う。
XでありYOSHIKIの創造する音楽に影響を受け、時には救われた人間として、巨大なビジネスシーンの中で消費されるだけの存在であってほしくはないから。
凛太朗

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