幕埜リア

ソウル・ステーション パンデミックの幕埜リアのレビュー・感想・評価

3.2
帰る家など無い。
祖国?幻想ですか⁈

アイデンティティの欠如した群れる人の波を無慈悲に描く。
ゾンビ映画の本来のテーマ性に真摯な作品で、もはや幻想なぞ抱きもしない若者である監督からのシビアで現実的な目線が突き刺さる。

救済は無い、知恵も無い、ただ追われ、呑み込まれる姿しか映さない救いの無さは、アニメでなければ見ていられなかったかも知れない。

ゾンビとアニメの親和性はやはり低かった。
どうしても新しいゴア描写を求めてしまうし、焦燥感も恐怖も適度に欲しい。
アニメならではの表現に期待したが、手抜きの背景や部分的なデジタルアニメパートに対する違和感の印象ばかり残った。

ただ、ここまでの痛烈なアンチテーゼを描くには、アニメ、ゾンビという枠組みが無ければ、とても直視に耐えなかったとは矢張り感じたし、映画的カタルシスに安易に走らない無秩序こそ狙いであろうとは思う。

〜〜〜〜〜〜

以下ネタバレ

ホームレスの爺さんと主人公が夜の地下鉄構内に入ろうと上がらないシャッターをなんとかこじり開けようとする。
迫りくるオバハン。
素晴らしいカット割りと落とし方に爆笑。

警察のバリケード前で、共産野郎共と対峙して祖国に尽くしてきたのに!と喚き散らすおそらく何もして来なかったハゲ親父の赤いTシャツのプリント。
”BE THE REDS?”てwww

電話に出ることのない父親。
オチを見て納得。

その父親に命尽きてこそ報復を遂げるシーンは、より凄惨極まりなく、より果てしなく、より執拗なまでに映し出して欲しかったが、新感染同様にあっさり控えめ。
監督の真意は読めないが、個に対する攻撃なぞ無意味であると訴えているのかも知れない。

主人公が新感染の特急に乗り込む一人目という事だが、ポロ襟のピンクx白のボーダーワンピの衣装は合わせて欲しかった。

寄る辺ない主人公がからがら辿り着くのがタワーマンションのモデルルームとは何とも皮肉。

2017劇場鑑賞89本目