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ソウル・ステーション パンデミックのpanpieのレビュー・感想・評価

3.7
「新感染」の前日譚のアニメ、やっと観てきました!
都合がつかずなかなか観に行けなかったらあっという間に夜に1日1回しか上映しなくなって慌てて観てきました。



家出をして風俗店で働いていたヘスンは借金をして店を逃げ出し助けてくれたキウンと同棲をしていた。
キウンは働かず家賃も滞納している。
ヘスンに売春させて家賃を払えばいいというキウンと大ゲンカをしてそこで二人は別れてしまう。
帰る場所がなくなってしまったヘスンは傷心のままソウル駅へ向かう。
その時首から血を流しよたよたと苦しそうに歩いて駅へ向かうホームレスの老人がいた。
周囲の人達は大怪我をしているのに相手がホームレスと分かると見て見ぬ振りをする。
老人の弟が一人助けを求めたり少ないお金で薬を買いに行ったり奔走するが戻ってみると老人は息絶えていた。
足や首から顔にかけて黒い血管が無数に走っていた…

ヘスンは行くあてもなく途方に暮れていると叫び声がして幾人かの人々が悲鳴をあげて振り返りながら何かから逃げて来る。
不思議に思って声の方をみると血走った目で血だらけの暴徒と化した人達が座っていた人に飛びかかり襲い始めた!
恐怖のあまりヘスンも逃げる人達の後を追って逃げ出す。
暴徒達は足が早かった!
途中何人かが襲われ逃げる人達の数は減って行く。
やっとの思いで最寄りの警察署に駆け込むが…



冒頭は本当に怖かった!
老人がソウル駅周辺では第1号だと思うが誰にあるいは何に噛まれたのかは描かれてなくいつゾンビに変わるかドキドキして観ていた。
韓国語の声優の声が大きくて独特な絵にも最初は馴染めなかったのだが「新感染」の監督は確かアニメ畑の人だったと思い出し初めての韓国版アニメを味わおうと気を取り直しそこからはあれよあれよの展開で最初の違和感も何処へやら。笑
警察署のシーンはこれからどうなっちゃうの?とハラハラの連続だった。

恋人に売春させて家賃を払おうなんてクソ野郎のキウンがネットにヘスンの映像をアップしたお陰で運良くなのか悪くなのかヘスンの父親を客だと勘違いしての出会いだったがこのコンビも意外とモタっとしていて私のハラハラに拍車をかけた。
お父さんが立ちショ◯しに行っていたり意外と焦らずゆっくりしていて今の状況わかってる?と私の手汗が凄かった!
キウンは元々サイテーな奴だったけどヘスンのお父さんは頭が回って強くて頼もしい人できっとヘスンと再会できると信じてまるで私も一緒に逃げているかの様な臨場感が凄かった。
ただスピード感といえば「新感染」の様な畳み掛ける様な展開ばかりじゃなく泣いているところが長かったりちょっと中だるみも感じた。

ヘスンと逃げていたホームレスのおじいちゃんもなかなか賢い人で頼れるおじいちゃんだった。
でも二人で地下鉄線路を歩いている時家に帰りたいと大声で泣く所は切なかったけどそんな大声出したら来るよ!と私の方がビクビクしてイマイチ泣けなかった。

今作は「新感染」の前日譚と謳っているが全く別の視点で描かれていた。
監督が同じとは思えなかった程毒が黒く渦巻いていた。
「新感染」では子供を起用しているからかな、あのバス会社のオヤジのいやらしさはあったものの今作とは見せ方が違っていた様に思う。
アニメ畑の監督なのだから正しくはこちらがヨン・サンホ監督の真骨頂なのだろう。
ヘスンと逃げていたおじいちゃんが「昔は国の為に戦ったのに今は帰る家もない」と言うセリフから恐らく戦争で国の為に戦ったのだろう。
ホームレスの問題や反体制の集会が開かれているから軍が制圧しに出てくるシーンだったり韓国政府を暗に批判しているとも取れてる。
借金をして風俗で働かされるのは韓国だけではなく日本も同じなんだろうけど「チェイサー」を思い出した。
「NET」でもそうだったが弟の大学人学資金の為に姉が体を売る。
韓国社会を詳しくは知らないが監督はその事も訴えたかったのかもしれない。

ラストはそうきたか!と衝撃が走った。
全く予期していなかった!
最近観る映画で全く予想がつかなくてちょっと嬉しい。
この人間の怖さを扱った作品で思い出すのがダニー・ボイルの「28日後…」だ。
あれもゾンビより怖いのは人間だった。
よくあるテーマなのかもしれないがラストから別の映画に変わった。
「新感染」でもそうだった事を思い出した。
やはり一番怖いのは人間。


いやーラストは本当に胸糞悪かった。
やられた。
ヨン・サンホ監督の他のアニメ作品も機会があれば観てみたい。
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