チーズマン

ソウル・ステーション パンデミックのチーズマンのレビュー・感想・評価

3.3
『新感染 ファイナル・エクスプレス』の前日譚となるアニメーション映画。
監督も同じくヨン・サンホ。

単純に劇場上映作品として映像とのクオリティだけで言えば日本アニメを見慣れた者にとっては相当ぎこちないし、単体のゾンビ映画としては別に既存の枠を出ないんだけど『新感染〜…』の前日譚としてはとてもしっかりとした社会派ドラマになっていた。

序盤のソウルステーションの立派な外観とは裏腹に、この映画の登場人物達のほとんどがホームレスをはじめとする社会の下層に位置する人々、メインの登場人物でさえネットカフェ難民と理不尽な借金を踏み倒して逃げた風俗嬢で、出てくる会話や描写を見てるとなんと生き辛いんだろうと嫌でも思う。

そんな弱者達がゾンビから必死に逃げて助け合いサバイブしては死んでいく、誰の目にも関心にも止まらないところで。
特に終盤の逃げ込んだ高級モデルルーム、この豪華な場所から程遠い者同士で繰り広げられる“もがき”のような一連のシーンの虚しさが印象に残った。

無関心。

社会の下の、いや、それぞれ“自分よりも下の”と言っていいかもしれないその下の階層が何も見えないのに下からは上が見える謎のフィルターを描いたような作品だった。


アニメとしての映像などスタジオの技術面さえ上がればこの監督はもっと面白い作品が普通に出来るんだろうなと思った。
その技術は積み重ねだから一朝一夕ではなかなか上がらないとは思うけどね。
あ〜だから、それは待てない、ってことで『新感染…』は実写にしたのかな。
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