ぴのした

ホドロフスキーの虹泥棒のぴのしたのレビュー・感想・評価

ホドロフスキーの虹泥棒(1990年製作の映画)
3.3
カルト映画の帝王ホドロフスキーの日本未公開作品がついにレンタル解禁。いつも通りシュールではあるけれどホドロフスキーの中ではそれほどぶっ飛んでない印象。

盗っ人ディマは、瀕死に陥った大富豪の遺産を相続する予定の変人メレアーグラを地下にかくまい、遺産の分け前をもらうため、身の回りの世話をして暮らしていた。2人が暮らし始めて5年が経ち、大富豪がようやく死んだ知らせを受けるディマたちだったが…。

ストーリー自体はわかりやすいものの、大男と小人のコンビといったマイノリティへの目線、サーカスとパレードのモチーフ、画面に溢れる演技上手な動物たち、キリスト教を小馬鹿にしたような演出などなど、いつものホドロフスキー節がところどころで炸裂していて、テンションが上がった。

なんか慣れてくるとこの気持ち悪さというか理不尽さというかシュールな笑いがクセになる。特に大富豪の最初のシーン、犬にキャビア食べさせて客人のディナーに骨を出したり、遊園地で100円入れたら動き出すパンダみたいなんに乗って音楽に合わせてシンバルを鳴らしたりすシーンはもうさいっこう。もっとやってくれって感じ。

カルトが抑えらた一方、汚い土地で動物とファンファーレが暴れまわる混沌とした高揚感はあるので、クストリッツァの映画みたいだった。

ホーリーマウンテンとかエルトポ並みのエログロカルトは抑えられていて見やすい印象。ホドロフスキー入門編って感じ。ただ、そのぶんストーリーとかはそんなにわかりやすく面白いわけでもないから、普通の映画が見たい人にはつまらないかもしれない。そして逆にもっと過激なものを見たい人には物足りないかもしれない。

この映画はホドロフスキーの初の資本投入映画らしい。言ってしまえぼホドロフスキーの初の大衆向け映画かもしれない。他の映画に比べても大きなセットの破壊とかエキストラの数とかお金もすごいかかっている印象。にもかかわらずここまで自分のアイデンティティというかスタイルを保っているのはさすが芸術としての映画にこだわっているホドロフスキーといえそう。

この映画ではじめてホドロフスキーと出会って「悪くないじゃん」って思えた人はサンタサングレ→リアリティのダンス→ホーリーマウンテン/エルトポの順でホドロフスキーを見よう。