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映画 夜空はいつでも最高密度の青色だのbluemercenaryのレビュー・感想・評価

4.0
慎二の兄貴格な智之も何処かすかしている感が強いけれど、やっぱり孤独だった。
出稼ぎアンドレスにはフィリピンに妻子がいた。
中年岩下はもう体がボロボロで仲間の足手まといになりつつあった。

慎二の住むアパートの独居老人 ―― 慎二にゴミを片付けてもらい、慎二にお薦めの本を紹介する。
田舎に住む美香の家族 ―― 母の姿は無く甲斐性のない父親と外界に出たい高校生の妹。
淡々と仕事進める現場監督に、マンションで音楽に興じるアンドレスの仲間と、それにキレる隣人。
美香の元恋人に、慎二に何かを伝えたい同級生・・・・そして路上シンガーの女の子。
二人を取り巻く人々も意味深で、何か心に抱えてる。


誰もが美香だし、慎二だ。
誰もが似たような生きづらさを抱えてる。
透明にならなくては息も出来ない。
ではその形作っているものは何なんだ。


最果タヒさんの同名詩集が原作となった作品は、詩集同様に冒頭から心鷲摑み感が半端なかった。
東京の夜空の下で、その日暮らしのような毎日、息をするのも精一杯。
だけども他愛のない事に幸せを感じる。
ちょっとした出会いが希望になる。
ふとした瞬間が明日に繋がったり、夢に続いていく。

きっと絶望に陥るキッカケもそれに近いんだけれど、前向きに生きている限り何とかなる。
誰もがもがいて喘いで溺れそうに生きてる。
誰もが何気なく恋をして希望を見つけて生きている。

そんな事を美香と慎二の二人を通して描いてみた。
瑞々しい演出で描いてみた。
人生っていいなぁ、不器用でも生きてるって悪くないよ。
そう思えてしまう幸福感と満足感。
原作の心地よい読後感が見事に映像化されてた。
本当に素敵な映画でした。


仕事を辞めた岩下の言葉「死ぬまで生きるさ」、そして呟く「ざまあみやがれ」・・・・・・・強烈。
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