菩薩

映画 夜空はいつでも最高密度の青色だの菩薩のレビュー・感想・評価

3.5
東京、特に渋谷という街には多種多様な人間がいるのであろうが、自分の様な人間には彼らは単一の種から繁殖した様にすら見える。年に一度のハロウィンでここに集合する事だけを目的とし、毎年毎年口癖のように「人生変わるわ〜」を連呼する、いつ何時でも携帯電話を離せず、路上で突然立ち止まったかと思いきやおもむろに自撮りを始め、それをアプリで加工し、いかに四角い画面の中で自分を華やかに見せるかだけに固執した毎日を過ごしているような、瞬間的な繋がりとヴァイブスとか呼ばれるよく分からない衝動に突き動かされて、周りの目など気にしてるふりだけしながら気にせずに、今を、今だけを楽しんでいるような幸せな人々、とここまで超偏見のみで書き殴ってみた。そんな人々にはこの作品は一ミリも響かないだろうし、ラブホ街のど真ん中に位置する映画館でこの映画を観たトキメキを抱えながら、その勢いでなだれ込みそのままめちゃくちゃSEXするカップル達、そんな彼らの前もおそらくこの映画は瞬間的に横切っていくだけであろう。それでいいのだと思うし、これを撮った石井裕也の精神状況はおそらく『反逆次郎の恋』を撮った時のそれに確実に逆行しているのだろう。この映画のターゲットはきっとそんな華やかな彼らではなく、そんな彼らに消費される側の人間であり、消費された後に無視される人間であり、世間一般では「ダサい」と呼ばれる者達なのであって、だからこそこの作品の持つ「ダサさ」と言うのはその次元まで降りてきている。ダサくたって日々を生きているクズ共、光の消えぬ街で前だけを向き空の青さに気付けない者達には唾棄されるべき作品を、この時代に生み出した石井裕也の勇気は賞賛されるべきなのかもしれない、が、俺は別にこの作品好きでもなんでも無い、夜はいつでも、最高密度の青髭だ。
菩薩

菩薩