堂々巡りでどこにも行き着けない閉塞した世界がゆっくりと展開します。少しずつ積み重ねられ、静かに深く浸透します。
その語り口のリズムは、最近観た中ではマンチェスター・バイ・ザ・シー、以前ではバッファロー’66と共通しているでしょうか。そういった作品が好きな人には合うかもしれません。
雑踏の人波や路上歌手などの演劇的表現がやや安直に感じられたり、登場人物がナイーブすぎないかと思うところもありますが、全体の良さが勝ります。
パンフレットの内容や装丁がとても豪華なので、気に入った方にはオススメします。角田光代の解説文など腑に落ちます。