mrかっちゃん

映画 夜空はいつでも最高密度の青色だのmrかっちゃんのレビュー・感想・評価

5.0
キネマ旬報ベストテンで去年の邦画一位に選ばれ数々の映画賞を総なめした作品。
それでいて日本アカデミー賞からはスルーされるという日本アカデミー賞の闇を映し出している。

大ヒットした同名の詩集を元に「舟を編む」の石井裕也監督が映画化した作品。
ラブストーリーですが単純な恋物語ではなく、東京すなわち渋谷、新宿を舞台に生きるのが不器用な大人たちの日常を映し出しながら、下手くそだけどどこか愛くるしい2人の男女のラブストーリーが紡がれていく。

ブラックな工事現場でこき使われる左目が殆ど見えない池谷壮亮。
昼は看護師で院内で誰か亡くなり「今でもありがとうございました」と言われると「大丈夫すぐ忘れるから」と心の中でつぶやき、夜はガールズバーでアルバイトをする暗い過去を持つ石橋静河。

東京は今までで一度ぐらいしか行ったことがない田舎者ですが空気感、演出からリアリティと日本の縮図のように感じられた。

ある人は掃き溜めのような生活をしていても、どこかのある人は有り余るほどの札束で酒を飲みながら女たちと遊び倒している。
劇中、2人が中盤デートをした後の帰り道、見つけたゴミを漁る子犬。数カット後にはアニメーションによって保健所で殺処分され工場の煙となり東京の街に流れる。
そんな世界の残酷さを描きながら、青春物語のような甘酸っぱさすらあるドラマを見せてくれます。

劇中では好き、愛してるという言葉はあまり使われずそれでいながらも愛というものの寛容さを感じられた。
見てもないのに言うのは悪いとは思いますが最近の薄っぺらい恋愛映画とは比べ物にならない密度と実在感があります。

こんなにも愛おしくでも不器用に今を生きようとするこの作品の人物たちがとても好きになりました。
本当に素晴らしい映画作品だと思います。
こんな風に心を動かされる作品に出会えるから映画を観ることはやめられません。