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映画 夜空はいつでも最高密度の青色だのcoroのレビュー・感想・評価

3.9
透明にならなくては息もできないこの街で、きみを見つけた。
悪い予感だらけの今日と明日が、すこしだけ、光って見えた。
この世界に少し触れただけで溶けてしまいそうになる。今思えばここに隠されているのに、鑑賞途中から、あいみょんの“生きていたんだよな”の声が何度も頭をよぎる。それを偶然なのか必然なのか何度も出会うストリートミュージシャンの“頑張れ”の声が毎回打ち消していく。

主人公のふたりも偶然なのか必然なのか何度も出会いを繰り返した挙句本当に出逢う。
恋愛をすると人は凡庸になる、と自分の凡庸さを否定し、内側にある透明なものをパトライトのように赤く染め、愛することを拒絶する彼女と、嫌な予感がするよ、が口癖の彼が混ざり合うことによって、様々な色の混ざり合う限りなく黒に近い世界の中から、徐々に失いつつある視界と引き換えに色を取り戻していく。

この映画に天国は存在しない。上を見上げても見えるのは空だけだ。しかも赤や青や色んな色が混ざり合った空。いつか白い骨になっても、いつか白い灰になっても、天国にたどり着くことはない。でもいつかその白い灰は、花びらとなって夜空を舞い土に還ってぱっとはじけて限りなく透明に近い星になる… ような気がする
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