晴れない空の降らない雨

ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺんの晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

3.4
 2016年に東京のアニメアワードでグランプリを獲ったヨーロピアン2Dアニメ。劇場公開されないことへの嘆きをちらほら見聞きしたので気になっていたところに、先週1日だけ上映したのを鑑賞したが、フタを開けてみると雰囲気は悪くはないが絶賛するほどでもなかった。
 まず、制作者にとっての節約以外にフラッシュアニメの長所が分からない。セルルックCGは、手描きでは不可能な表現と和製アニメ的なルックを両立させることを狙っているんだろうと思う。フラッシュはより手描きをニュアンスを残した表現? しかし手描きと比較して、フラッシュに固有の特長とは?
 輪郭線のないキャラデザと単色塗りの背景は、なるほどミニマリスティックな(あるいはグラフィックデザイン的な)美学を感じさせなくもない。とはいえそれも、冒険を通じた子どもの成長譚という主題の普通さと併せて、大人向けというほどアートではなく、子どもを喜ばせるには弱すぎるように思う。
 お話は、要は「女の子が冒険するやつ」で、随所に宮崎駿の影響を感じさせる。案の定というか、カートゥーン・サルーンのスタッフが参加している。子どもが頑張るアニメというのは、それだけで一定の面白さがある。ただ、本作は過酷な白銀世界を淡々と突き進む静かな冒険であり、『ソング・オブ・ザ・シー』などと比べてもスペクタクルに乏しい。視覚的にも、同作のような現実を飛び越えていく想像力の冒険があまり見られない。
 それでも、本作を褒める人がいるのも分かる。BGMに支えられて、極寒の国の叙情感がよく出ているし、過酷な旅の淡々とした描写が長いだけに、最後は主人公の穏やかな表情をみられてホッとする。