MasaichiYaguchi

ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.4
戦争や時代の激流に飲み込まれ、波乱万丈な生活を送った王族を描いた作品として、アカデミー賞9部門受賞したベルナルド・ベルトルッチ監督の「ラストエンペラー」が余りにも有名だが、この作品は日本統治時代、大韓帝国の初代皇帝・高宗の娘の激動の人生を描いている。
清朝最後の皇帝で後の満州国皇帝の愛新覚羅溥儀に比べ、本作の大韓帝国最後の皇女・徳恵翁主の知名度は低く、私はこの作品を観て初めてその存在を知った。
ただ両者共、王族としての誇りを持ち続け、故国愛に溢れ、周りの者がその意を汲んで王朝復興に奔走する。
だがその反面、そのプライドや執着心がより自らの人生を困難なものにしているように思える。
また両作品共、史実に映画的な脚色、フィクションを加えてよりドラマチックな展開にしている。
この作品のヒロイン徳恵には、彼女の支えや助力になる人物が何人か登場するが、パク・ヘイル演じるキム・ジャンハンがキーマンとなって物語の節目、節目で重要な役割を果たす。
「ラストエンペラー」では、日本が敗戦して戦争が終結した後に、更なる困難が主人公を待ち受けていたが、この作品でも終戦後、やっと様々な呪縛から解放されたと思っていたヒロインに、思いもよらない試練が課せられていく。
本作で様々な女優賞を受賞した徳恵役のソン・イェジンが素晴らしく、娘時代から晩年までのヒロインを演じ切っている。
本作は日本を主な舞台としているが、韓国の俳優たちが殆どの人物を演じる中で、戸田菜穂さんが重要な役柄で出演していて、その存在感を発揮している。
第二次世界大戦で日本を舞台にした外国映画は、どうしてもそこに反日感情を読み取ってしまうが、「ラストエンペラー」にしろ、本作にしろ、終盤で描かれた展開は、日本だけが“悪者”ではなく、時代の変化や自国の政治体制によって更なる悲劇や試練が生まれることを描いている。
だからこそ、“悟り”や“癒し”にも似たラストが余韻を残します。